関所の夜明け
関所を守る領主軍は百五十人だった。古い石門の上に盾を並べ、横道は倒木で塞いでいる。セリアの使者が着いたとき、内側では麦の荷下ろしが行われていた。塩を通さない門も、領主の食料は通している。
通行の証文を示すと、守備隊長は紙を引き裂こうとした。使者は引き止めず、同じ内容を刻んだ木板を取り出した。紙を奪えば取引の記録まで消えると思っていた隊長は黙った。
領主が求めているのは税ではなく、北方が南の争いに加わらない保証だった。関所の背後にある小領地は二つの国から兵糧を要求され、どちらかへ協力した瞬間、もう一方に攻められるという。
セリアは関所を通る塩だけに護衛を付け、北方兵は門から先へ進まないと提案した。代わりに領主軍が関所から北の道を監視する。提案を聞いた隊長は「その約束を誰が守る」と尋ねた。
セリアは自分の予備盾を門へ置いた。北方の三本線が刻まれた古い盾で、隊を率いた最初の日から使っている。「人質にはならないが、違えたときは返してくれ」
夜明け、門は半分だけ開いた。塩を積んだ荷車三台が北へ出た。九台分の空腹には足りない。だが隊長の部下は、荷台を調べるため剣を抜かずに済んだ。
関所の隊長は去る商人を数え、荷車の底に隠された鉄片を見つけた。塩の代金にする品だと商人は言ったが、刃物に加工できる形でもあった。隊長は全てを没収せず、その場で重量と所有者を記録させた。互いの疑いを消すことはできない。だからといって一つの疑いを理由に、必要な塩まで止めるのは違うと判断した。
セリアは盾を置いて歩き去った。自分の兵が無事に帰った知らせより早く、塩を待つ町へ三台分の到着予定が伝えられた。




