三本線の反対票
北方の評議会で、軍への臨時徴発をめぐり票が割れた。三本線の旗は三つの自治都市が平等である証だったが、冬の損失は平等ではない。西の都市は塩も麦も足りず、東の都市は小さな倉を守っていた。
セリアは関所へ出す盾兵八百人と、街道整備に要る人夫の数を示した。一人の議員が軍を動かせば交易相手が敵になると言い、別の議員は何もしなければ北の村が死ぬと言った。
会議の途中、採掘頭から岩塩の検査結果が届いた。塩分はあるが、苦い不純物が多い。家畜の皮を保存する用途には試せても、食料には向かないという。希望を口にしていた議員は、顔を赤くして書類を伏せた。
評議員の一人が、税を増やす代わりに祭りの費用を回そうと提案した。祭りは冬の初めにしか開かず、住民が楽しみにしている。反対者は多かった。結局、祭りの灯火を減らし、広場の店は残すという折衷案が出た。
セリアは予算を得たが、八百人の出兵は認められなかった。通行権を交渉する使者と、護衛二百人だけで南へ向かうことになる。
東の都市の議員は帰路、住民から「祭りの灯だけ減るのはなぜか」と囲まれた。評議会の採決数を説明しても、家族の楽しみが減る理由にはならない。議員は広場の演奏を続けるため、倉で余った布を飾りに使う案を住民へ持ち帰った。決まった予算をどう暮らしに置くかは、議場の外でも続く仕事だった。広場では子どもが古い灯皿を磨いていた。
閉会後、議長は旗の三本線を指して言った。「一本ずつ別に立てば、風に折れる」しかし同じ風に耐える方法も都市ごとに違う。セリアは議決書に記された少ない兵数を確かめ、軍靴ではなく旅人の靴を履かせるよう使者に指示した。




