塩坑の息
岩塩の洞穴へ入った職人たちは、明かりを二つしか持っていなかった。細い穴に人が重なると空気が淀み、灯火が弱くなる。採掘頭のラウは入口に縄を結び、三人ずつ時間をずらして進ませた。
壁に塩の筋は見えた。だが石を崩すと湿った泥が混じり、食料を保存するには水で洗って乾かさなければならない。試しに持ち出した欠片は、舐めると苦かった。若い鉱夫は肩を落としたが、ラウは毒がないか確かめるまで村へ渡すなと命じた。
坑道の奥で、古い鉄の扉が見つかった。蝶番は朽ち、向こうには人の通った跡がある。第三次世界大戦より前の設備かもしれなかったが、銘板を読める者はいない。採掘頭は好奇心より先に、扉の下から流れる冷たい風の向きを調べた。
地上では兵士が入り口を守っていた。水を運んだ女たちは盾のせいで道が狭くなり、兵に離れるよう頼んだ。隊長は危険を恐れたが、坑内の者を救い出すには人が通る幅がいる。見張りを一段上へ移した。
夕刻、ひび割れた天井から砂が落ち、作業は中止された。収穫は小袋に半分。遠い村の冬を支える量ではない。
鉱夫の一人は坑内で咳き込み、地上へ出ても胸の痛みが消えなかった。ラウは原因を塩の粉と決めつけず、採掘を止めて医者を呼んだ。村の井戸水を使うと洗い場の水が足りなくなるため、泥を流す池も掘り直す必要があった。洞穴を開くとは、入口の外にまで新しい仕事を増やすことだった。検査用の欠片は布袋へ分けられた。
セリアは袋を受け取らず、検査を終えたら評議会へ運べと伝えた。その夜、ラウは扉の前に残した縄の長さを帳面に書いた。街道が開くまでの代用品を求めたはずが、洞穴そのものに守るべき仕事が生まれていた。




