父の盾、娘の文字
西岸のハルヴァンは、医療所から戻った長女を迎えに橋へ来た。娘はまだ長く歩けないが、ようやく家族と同じ岸に暮らせることになった。手続きが終わるまで、父は橋の白線のそばで待っていた。
娘は学校で覚えた文字を、小さな木板に書いて見せた。父親の名と、母親の名と、妹の名。最後に自分の名が並んでいる。
「これ、全部一緒の家に書けるの」
ハルヴァンは頷いた。住む天幕は狭く、雨が降れば床が濡れる。それでも四人の名前を一つの場所に置ける。
西岸へ戻ると、妻は温めた豆の汁を用意していた。妹は姉の手を引き、天幕の入口を少し高くしたから頭をぶつけないと教えた。
夕方、ハルヴァンは父から受け継いだ盾を外に置いた。縁には古い傷があり、直した革も色が違う。娘は木板の裏に盾の形を描き、小さな字で「お父さんのもの」と添えた。
彼は戦が終われば盾を捨てたいと思っていた。しかし次に招集されれば、また持たなければならない。娘はその事情を知らず、絵の盾に花を一つ描き足した。
長女は医療所で覚えた薬草の名前を母親に教えた。母親は娘が寝込んでいた日々を思い、もう病院へ戻りたくないだろうと尋ねた。娘は首を振り、よくしてくれた医師のところへ手紙を書きたいと言った。父は代わりに書くと申し出たが、娘は自分で時間をかけて書くことを選んだ。小さな板に並ぶ文字は拙く、それでも一つずつ家族のものになった。
夜、家族が眠ると、ハルヴァンは外の見張りへ出た。橋の向こうから荷車の音が聞こえた。家族が同じ岸に戻ったことと、川を挟む国々が和解したことは、まったく別の出来事だった。




