市場に置かれた秤
大河の橋の市場に、共用の秤が置かれた。東岸と西岸では袋の大きさが違い、同じ一袋でも麦の量が一致しなかったからだ。商人たちは秤を使えば公平になると期待したが、最初の日から行列ができた。
西岸の革職人は乾いた皮を量り、東岸の農夫は野菜を量った。重さだけで価値が決まるわけではない。濡れた皮は重く、傷んだ野菜は軽くても売れない。
市場係メレンは、秤を使う物と使わない物を分けた。麦と塩は重量、靴底や布は品質を確かめて交換する。細かな規則を書いたところで、読み書きのできない商人は困った。
そこで木札へ麦袋や革靴の絵を描き、秤の横に並べた。子どもたちが絵を手伝い、門番は人の流れを整理した。
昼頃、西岸の老人が一握りの塩を持って来た。秤には載せられるが、交換できる野菜は少ない。メレンは老人の希望を聞き、医療所で使う布切れとの交換相手を探した。
夕方、秤の受け皿が少し曲がっていると分かった。誰も不正を疑わず、翌朝の修理が決まった。
市場へ来た老人の手は震え、少量の塩をこぼしてしまった。周りの商人は拾うのを手伝ったが、誰がどれだけ渡したか分からなくなった。メレンは共用の布を敷き、その上で量るようにした。値を釣り上げる工夫ではなく、失われる物を減らすためだった。古い布には麦の粉が付いたが、翌日の市でも洗って使えた。大きな法律がなくても変えられることはあった。
市場の屋台は前より多く開いたが、利益が全員へ等しく渡るわけではない。メレンは片づける商人たちを見て、規則を増やすほど、その規則を使える人と使えない人が生まれると感じた。橋の下では、同じ流れの川が夜へ向かっていた。




