船板の裂け目
サルディアの港で、拿捕船の船底に小さな裂け目が見つかった。長く港へ繋がれたままだったため、船板が乾いて歪んでいたのだ。港務局は修理費を船長に請求しようとしたが、船長は船を動かす許可さえなかったと反論した。
エルナは港の大工を呼び、どの時点から傷が広がったか調べた。船長は航海日誌を見せ、拿捕された日の船体検査には異常がなかったと告げた。
長官は責任を王国が負うと認めたくなかった。だが修理を遅らせれば船が沈み、国庫へ入るはずの資産そのものが失われる。
大工は先に船を浅瀬へ移すよう勧めた。盾兵が押しても船は動かず、潮が満ちる時刻を待つ必要があった。
夕暮れ、舟の周囲へ縄を張り、船員たちが水に入って支えた。彼らは捕らわれた側だが、船を失えば故郷へ戻る希望もなくなる。
修理が始まると、大工は船板の裏に古い傷を見つけた。幾度も直されてきた船だという。船長は笑って、自分が子どもの頃から海を渡っていたと話した。
修理を任された大工の息子は、拿捕された船の船長と話すことを禁じられていた。だが板を外す位置を知らず、船体の古い補修箇所を傷つけかけた。父親は規則を破って船長へ尋ね、その場で修理の方針を変えた。長官は叱ったが、修理の見通しが立ち、船を沈めずに済んだことまでは否定できない。船を知る者から話を聞かなければ、所有権の紙だけでは傷を直せなかった。
エルナは報告へ、港内で生じた修理費と船員の労働時間を並べて書いた。どちらが負担するかは王都の判断を待つしかない。それでも水を吸った船板は、今夜のうちに締め直さなければならなかった。




