↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四次世界大戦――剣と盾しか残らなかった世界で  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
105/228

濁った井戸

橋の西側の避難民地区で、井戸の水が濁り始めた。最初に気づいたのは、毎朝水を汲む少女だった。桶の底に細かな砂が溜まり、前日より匂いも強い。家々ではすでに腹を壊す者が増えていた。

医師テラが訪ねると、井戸の近くに新しい排水溝が掘られていた。雨を逃がすためのものだが、溝が井戸の地下水に繋がっていた可能性がある。

西岸の水番は井戸を閉じるよう勧めた。しかし水を止めれば、遠い川まで病人の家族が歩かねばならない。テラは配給の水を別に確保するよう求めた。

ヴァルドは兵の飲料水を少し分け、近くの集落から水桶を借りることにした。兵の中には避難民へ水を渡すのを嫌がる者がいた。自分たちの備えが減るためだ。

テラは誰を責めるより、腹を壊した者の家を地図へ記した。井戸に近い家だけでなく、遠くの家にも病人がいる。同じ水を運んで飲んでいたことが分かった。

夕方、少女は井戸の縄を外し、誰も水を汲まないよう小さな札を掛けた。字の読めない者のために、黒い波線を描いた。

井戸の近くに住む老職人は、排水溝を作る前の土地を覚えていた。昔は雨のあとに水が集まる窪地があり、子どもたちが小さな舟を浮かべたという。避難民が増えて窪地を埋め、そこへ家を建てた。テラは昔話を懐かしむためではなく、水が地面の下をどう通るか知るために聞いた。古い地形を覚えている者の言葉が、井戸を調べる手がかりになった。

夜、雨は止んだ。テラは患者の具合を見回り、汚れた桶を洗う場所を決めた。病気の原因が一つ分かっても、明日飲む水が足りなければ人は困る。彼女は濁った井戸の封鎖を、戦争の命令と同じくらい重い仕事だと感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。