帰還者の庭
ラウゼの避難民の中から、故郷の畑を見に戻りたいという声が上がった。イザクは危険だと止めたが、春に蒔く種を埋めてきた者が多い。畑を失えば南の仮住まいでも暮らしが続かない。
農夫の女性マルナは、故郷へ行ける道を知っていた。峠の軍道ではなく、谷の水路沿いの細道だ。イザクはその道を兵の迂回路として使わないと約束し、少人数の農夫だけで様子を見ることにした。
出発した者たちは、峠の下でミシュラの見張りに止められた。剣を持つ兵が近づいたとき、マルナは自分たちの手に種袋しかないことを示した。
見張りは命令を確かめに走り、長い間戻らなかった。待つうちに日が傾き、農夫たちは引き返すべきか話し合った。無理に進めば、畑へ着く前に捕まる。
ようやく届いた返答は、村へ入る人数を二人までに限るというものだった。マルナと老農夫が選ばれ、他の者は谷へ戻った。
二人が見た畑は荒れていた。家の屋根は残り、水路は土で詰まっている。マルナは種を見つけたが、腐っているものも多かった。
マルナは自分の畑から拾った種の中に、去年の収穫時に混じった雑草の実を見つけた。袋を開けば区別できるが、放っておけば新しい畑へ広がってしまう。彼女は南の谷へ帰る道で何度も袋を覗き、腐ったものと使えるものを分けた。敵の兵に見張られながら戻った時間より、手の中の種を選ぶ時間の方が長く感じられた。
帰り際、老農夫は庭の端から一握りの土を袋に入れた。新しい土地で育つか確かめるつもりだった。南の谷へ戻った二人が見たものを話すと、喜ぶ声より先に、誰が次に戻れるのかという問いが起きた。




