森のダンジョン
ハア……ハア……
この付近のダンジョンといえば、マヤの高校付近にある裏山の第8ダンジョンだ。
手に持っていたスマホを見ると、時間は18時。
母さんから「マヤを助けて」とだけメッセージが来ていた。
俺はダンジョンに入ったことがない。
18歳になると政府の管理下で一度ダンジョンに入ることを推奨されているが、俺は引きこもっていたため、まだ入ったことがなかった。
それに、あの一件以来、ダンジョンを避けていたからだ。
だが、ある程度の知識はある。
当然、とんでもないほどニュースになっていたし、ネット上でも常にその話題で持ちきりだった。
ダンジョン。
そこには未知の生物や資源があり、モンスターと呼ばれる存在に殺されることも当たり前に起きる場所だった。
ダンジョンができてすぐは世界中が大混乱していたが、政府の動きは意外にも早く、ダンジョンを管理し、立ち入りを規制し始めた。
モンスターを倒すとドロップするアイテムは、まるで魔法のようなものばかりで、中でも魔核と呼ばれる結晶は、エネルギー源としてとてつもない効率を生み出し、新たなエネルギーとして急速に世界へ普及した。
お金になるものが分かれば、それを稼ぎ出すのが人間だ。
自らダンジョンへ入り、モンスターを倒してドロップアイテムを売る「ハンター」と呼ばれる者たちが現れ始めた。
もちろん、それを利用して悪事を働く者もいた。
また、ダンジョンがある町の付近では、まれにモンスターが出現するため、それらの討伐や悪質なハンターを取り締まる政府組織も作られた。
母さんが通報したのはそこだろう。
倒れそうになりながら走っていると、目的の場所へたどり着いた。
第8ダンジョン入口。
30メートルはありそうな木が不自然に折れ曲がり、巨大な門のようになっている。
これがゲートか。
ネットでは見たことがあるが、実物は初めてだった。
木の前には複数の警備員がおり、強行突破しようとしても難しいだろう。
マヤはどうやって中へ入ったんだ?
ダンジョンへ入るには厳しい審査と政府への登録が必要だ。
当然、マヤは登録していない。
だが、母さんがそう言っている以上、間違いないだろう。
どこかに見つからずに入れる場所があるのか?
そう思った俺は、学校側から抜け道を探し始めた。
抜け道が見つかっていれば当然塞がれているだろうし、この辺りを知り尽くしているのは学校へ通う生徒だと考えたからだ。
しばらく探していると、ゲートを囲むフェンスの下に不自然に掘られた穴を見つけた。
人一人なら、なんとか通り抜けられそうだ。
穴の奥は長い草によって警備員から死角になっており、ゲートまで裏からたどり着けるようになっていた。
見つかれば止められる。
意を決し、警備員が目を逸らした隙にゲートへ駆け込んだ。
瞬間――
視界が歪み、体が浮かび上がるような感覚に包まれた。
『EXスキル:【ゲーマー】を獲得しました。』
その声を最後に、視界に映る景色は、まるで異世界のように変わっていた。




