第9話 巣鴨十月 - 新企画
「みんな、俺の仲間を紹介するぜ
「品川りもあちゃんだ」
巣鴨 十月がりもあを紹介する。
そして、後ろに一歩下がって引き立てる。
モノトーンの背景に、りもあのパステルカラーの衣装が眩しい。
「りもあが貴方に幸せを届けてあげる」
「ハッピー宅配便 品川り・も・あでーす」
お決まりのキャッチコピー。
そして、軽く頭を下げて挨拶する。
「巣鴨十月さん、ファンの皆さん、ヨロシクっ」
軽くウインク。
りもあは自宅からの配信なので、あまり大きな動きは出来ない。
今回は決めのポーズは無しだ。
「おう。よろしくな」
巣鴨十月が低い声で応える。
〈りもあちゃんカワイイ!〉
〈化け猫期待!〉
〈コラボ嬉しいです〉
〈トゲ様を取っちゃ駄目よ〉
〈可愛らしいお嬢ちゃんじゃの〉
りもあの登場により、コメント欄は大盛り上がりだ。
「りもあの成りすましがお邪魔したみたいね」
りもあの棒読み。
「そうらしいな」
「今回が初対面なのに、可笑しいわね」
そして、二人は顔を見合わせて、笑った。
そして、トークが始まる。
はずだった。
「十月さんの趣味は?」
「バンド活動と散歩だな」
「私はアニメやゲームが好きなの」
「へー」
いつも不機嫌そうな十月が微笑む。
そして、りもあがうつむく。
――トゲ様素敵!やっぱり無理にゃー
ここで会話が途絶えた。
少しの間
気まずい沈黙
それがしばらく続いた。
〈なに、画面固まった?〉
〈音が聞こえない〉
〈故障?〉
〈何か喋って〉
〈はて、耳が遠くなったかの〉
「青木くん、放送事故よ。何とかして!」
飛鳥部アリスが耐えきれずに叫ぶ。
慌てて青木くんが十月に向けてボードを出す。
『何か話して』
十月はそれをチラッと見ると、面倒臭そうに話し始めた。
「デビュー初配信、良かったぜ」
「そんな……恥ずかしいにゃん」
りもあの返答。
しかし話が続かない。
「社長、これは駄目なんじゃ……」
青木くんが情けない声を出す。
「そうね。無口なトゲさんと、化け猫化したりもあじゃ厳しいわね」
アリスは、なんとかして盛り上げる方法を考える。
十月が唐突に話を始める。
「俺のライブにさ、毎回来てくれる人がいるんだ」
「一人で来て盛り上がって、楽しそうにしてる」
「俺はさ、それを見て、本当に元気を貰ってるのさ」
りもあは驚いた。
――わたし、バレてる?
りもあのアバターが画面で固まる。
「俺は、歳をとっても、あんなお婆ちゃんになりたいと思うんだ」
十月がりもあの方を見て微笑む。
「りもあも俺のライブ来てくれよな」
りもあは無言でうなずき、心の中で言った。
――トゲ様、毎回、欠かさず行ってます
「はー」
「ふー」
アリスと青木くんが同時に息を吐く。
「社長、ハラハラして見てられないっす」
青木くんが弱音を吐く。
「青木くん、こうなったら新企画よ」
アリスが青木くんに新コーナーの指示を出す。
青木くんはうなずいて、スタジオの奥で準備を始めた。
画面がカラフルに点滅した。
「衣装交換しちゃおうのコーナー!」
ぱふぱふぱふっ
突然のコールが鳴り響く。
「さて、ここから新企画の始まりでーす」
「コラボの二人に、いつもの衣装を交換して楽しんで貰います」
MCは声を変えているが、青木くんが担当している。
「あいつ、楽しそうね」
アリスの口元が緩む。
「皆さん、準備はいいですかー?」
青木くんの掛け声。
〈え?楽しそう〉
〈トゲ様どんなかな〉
〈みたーい〉
〈りもあちゃんのも見たい!〉
〈楽しみじゃのう〉
「待て待て!」
「え?待つにゃー」
りもあと十月の叫び声。
画面の暗転。
そして、明るくなった画面上には、
可愛いパステル調の衣装をまとって真っ赤になった十月と、
ピチピチの革ジャンに包まれた、セクシーなりもあの姿があった。
「トゲさん……超可愛いっす」
青木くんの感情が漏れて声に出た。
「てめーぶっ殺す」
「恥ずかしいにゃー」
アリスは視聴回数を見て満足していた。
――このコーナーは定番化ね。




