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第4話 品川りもあ - 初配信

デビュー初配信が明日に迫った。

リハーサルは順調。グッズの準備も問題なし。ティザーPVの視聴回数も綺麗に上がって、ライブの接続数も期待できる。

――グッズの発注を増やそうかしら

アリスは久しぶりに手応えを感じていた。


「社長、大変っす!」

青木くんがオフィスに駆け込んで来る。

――お前は銭形平次のがらっぱちか。

「今度は何よ」

アリスは心の中で突っ込んで、青木くんの次の言葉を待つ。

「サッカーの中継で……」

青木くんの息継ぎ。

「りもあちゃんがテレビに映っちゃいました」

「何が問題なのよ」

アリスが首を傾げる。

「これ!」

青木くんがスマホの画面を見せる。


アリスは画面を覗き込む。

そこには、サッカースタジアムでユニフォームを着込んで応援する中年男性と品川りもあの姿があった。

「パパ活っ!」

思わず大きな声が出た。


「どうします?配信は明日っすよ」

アリスはしばらく考える。

「これ、見なかったことにして」

「え?強行っすか?」

青木くんが目を丸くする。

「りもあにも言っちゃダメよ。動揺するから」

そして、対策を考える。

「SNSとネットニュースはどう?」

青木くんが早速パソコンを開く。

「今のところ、特に騒ぎにはなってないっす」

「ネットのチェックは続けてちょうだい」

「わ、分かりました」

「りもあには、初配信の後に私から話すわ。止めさせなきゃ」

――最悪、身バレしなきゃ大丈夫よ。

――まずは、明日の初配信を乗り切らなきゃ。

アリスは自分に言い聞かせる。


そして、配信当日を迎えた。


青木くんがモニターを覗き込む。

そこにはイベント用のカラフルで華やかな衣装を着たアバターが映し出されていた。

「りもあちゃん、ちょっと動いてもらっていいっすか?」

青木くんが指示を出す。

「はーい」

りもあはスタジオのフロアを左右に動き、手を上げ下げしてみる。


この事務所ではVRセンサーを全身トラッキングに採用している。

センサーが品川りもあの動きを捉えて3Dモデルが同じ動きをする。

「いいっすね。問題ないっす」


アリスは進行の台本を確認する。

オープニング、自己紹介、歌のお披露目、そして、衣装を着替えてトークという段取りだ。

「普段使い用の衣装もチェックしたいから、試しに切り替えてみて」

配信チェック用のPCを見ながら、アリスが声を上げる。

青木くんが機材を操作する。

モニター上の品川りもあの衣装が瞬時に切り替わる。

「へえ、こっちも可愛いわね」

アリスがそう言うと、りもあが恥ずかしそうに微笑んだ。

「どっちの衣装も可愛いです。ありがとうございます」

「いやあ、それほどでも……」

なぜか青木くんが照れる。

「あと10分よ。衣装を戻してスタンバイして」

アリスは社長席について、パソコンの画面に目を向ける。ライブ映像のカウントダウン。ここからは視聴者と同じ画面が見える。


いよいよデビュー初配信の本番だ。

アリスは気を引き締めて画面を見つめた。


VTuber事務所せいんとのロゴが出て黒いシルエットの品川りもあが現れる。


軽快な曲が流れる。

それに合わせて、きらびやかな衣装に包まれた品川りもあが浮かび上がる。

「みなさん、初めましてー」

両手を振って可愛く挨拶する。


「りもあが貴方に幸せを届けてあげる」

「ハッピー宅配便 品川りもあです」

ポージングを決めながらのキャッチコピー。

アニメチックな澄んだボイスが似合っていた。


――順調だわ。

アリスは満足げに微笑んだ。


「まずは自己紹介するね。えへんっ」

首をちょっと傾げる。

「品川りもあ 16歳、自称ね。ここ深掘りしちゃダメだぞ」

「性別は、見ての通り女性です。ほんとよ」

「身長は165cm、体重は……言うわけないじゃない」

ここで、きゃらきゃらと笑う。

「もちろん、スリーサイズも、おしえませんっ」

人差し指を立てて正面に向ける。

「あ、でも、身長は教えてあげる。165cm。そう、ちょっと大きめなのよ。低い子が好きな人、ゴメンねー。でも長身の女の子が好きな人もいるよねっ」

「チャームポイントは、これ」

目元を指差す。

「見えるかなー。このホクロです。可愛いでしょ」

「可愛い?コメントありがとう。りもあ嬉しいわ」

「血液型はO型のおっとりさんです」

「特技は歌とピアノでーす。歌は、この後披露するから待っててね」

「趣味は、コスプレとか、アニメとか、ゲームとかサッカー観戦です。そう、ちょっとオタクっぽいの。みんな引かないでねー」


――上手いな。さすが個人勢出身ね。

アリスは感心しながら画面を見続ける。

接続数は355名。

決して多くはないが、弱小事務所では健闘している方だ。


「それじゃ、歌行きますね。パパ見てるー?」

――え?今、この子なんて言った?

品川りもあの無邪気な声に、アリスの背筋が凍った。

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