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第19話 渋谷ぱる子 - 道玄坂クッキー

渋谷ぱる子と青木くんの距離はすぐに縮まっていった。

ぱる子はオフィスに来ると、すぐにスタジオの青木くんの所に行って会話をするようになった。


「あたいの滑りはスピードが足りないんだよ。だから、ジャンプも高さが出なくてオーリーが決まんない」

ぱる子がため息をつきながら落ち込んだ表情を見せる。

青木くんは真剣にぱる子の話に耳を傾ける。


「その動画を見せて欲しいっす」

「分かった。これ、撮って貰ったやつ」

ぱる子がスマホで動画を見せる。

「俺に動画を送って貰っていいっすか?」

「じゃ、LINE教えて。それで送るから」

そしてLINEの連絡先を交換する。


――やった。アドレスげっと!

ぱる子は心の中で叫ぶ。

そして、そおっと聞いてみる。

「時々、LINEで連絡してもいいかな。別に大した話じゃなくてもさ」

少し不安になりながら返事を待つ。ぱる子は、胸の鼓動が高まるのを感じた。


「いいっすよ。でも、ぱる子さんも、既読スルーを怒らないで欲しいっす」

「別に怒らないわよ。恋人同士じゃないしさ」

言ってから青木くんの反応を見る。

無反応。

鈍いやつだ。


ぱる子は自分の動画を青木くんのLINEに送る。

「送ったよー」

ついでにお気に入りのスナップ写真も一緒に送る。

「私の可愛い写真も送ってあげる。変な事につかわないでねー」


そして、スマホのカメラを青木くんに向けてシャッターを切る。

「勝手に俺の写真撮っちゃ駄目っす」

青木くんの抗議を無視して写真をチェックする。真剣に動画を確認している横顔が撮れていた。

――割といいじゃん。

嬉しくて、顔がニヤけてしまう。


「動画の解析まで、何日か待って欲しいっす」

青木くんが技術者モードに入って作業を始める。これで今日の会話は終わりだ。


ぱる子はアリス社長との打ち合わせのため、社長席に向かった。


数日して、青木くんから連絡があった。

今日は打ち合わせがないから、紅茶専門店で待ち合わせする。

ぱる子のお気に入りの場所だ。


紅茶のオーダーが済むと、青木くんが解析結果を話し始める。

「ぱる子さんの改善点は角度っす」

「角度って?」

青木くんが動画を見せながら、途中で止める。

「ここっす」

それは、ぱる子がキッカーでジャンプする寸前のタイミングだった。


「板が上がりすぎてるっす。だから、高さが出なくて失速するっす」

本当だった。よく見ると、ジャンプの前に板を引っ張り上げ過ぎているのが分かる。

「これが癖になってるんだと思うっすよ」


ぱる子は舌を巻いた。さすがは理系だと思った。

「分かった。このあと、スケート場に行ってやって見る」

「俺も行っていいっすか?」

ぱる子が満面の笑みを浮かべる。

「もちろんよ!」


スケート場は今日も混雑していた。

青木くんも一緒に入場している。

「せっかくだから、滑ってみる?」

ぱる子は、青木くんをちょっとからかう。

「無理っす」

予想通りの答えにぱる子が微笑む。

「じゃ、見ててね」


ボウルに滑り込む。

何度か往復して勢いが増した所で、キッカーに向かう。

なるべく板を上げ過ぎないように意識して、ジャンプ。空中に飛び出す。高い!グラブも綺麗に決まった。

周りから感嘆の声が漏れる。


「やったー!」

「ぱる子さん凄いっす!」

ぱる子は、ボウルから出て青木くんの所に駆け寄る。

――青木くん大好き。

抱きつく。そのままキス。

今度は逃げられなかった。


ぱる子は想いを声に出す。

「あたい、青木くんのことが好き」

青木くんが返してくれる。

「俺もっす」

周りからパラパラと祝福の拍手。

ぱる子はちょっと恥ずかしかったけど、青木くんに抱き付いているうちに気にならなくなった。


二人でいちゃつきながらスケート場を後にした。

もう止まらなかった。

そのまま二人で道玄坂を上がってホテルに転がり込んだ。


部屋のお茶菓子に気づいた。

渋谷ぱる子の道玄坂クッキー

二人で同時に笑った。

楽しかった。幸せを感じた。


そして、二人の同棲生活が始まった。

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