ミーズの独白、覚悟と決意
ここでの生活に余裕ができたころ、私は本というものに興味を持つようになります。とはいえ文字が読めなかったので、内容はよくわからなかったのですが。母のいた時や子爵に仕えていた時は勉強というものをする機会がなかったので当然なのかもしれません。
そうした私の様子はご主人様も見ていたみたいです。仕事が終わったある夜に、私はご主人様のもとに呼ばれ、そこで文字の読み方や書き方について教えてもらいました。それから私は仕事が終わった後はご主人様のもとで文字の読み方や書き方を習うのが日課となりました。
一通りのことを学んだあと、ご主人様は私用に読みやすい本を用意してくれ、それを私にくれました。そこから私は少しずつ本を読むようになり、今はご主人様の蔵書もいくつか読むようになりました。(読んではいけない本もあり、そこは手を付けないように戒めています。)
なぜそこまでしてくれるのかとご主人様に聞いたことがあります。「学びたいと思うものがいれば手を差し伸べるのは当然でしょう。」といっていました。
私の仕事は家の仕事のほかにキテラ様のお世話もありました。キテラ様が死者であることにはすぐに気づきましたが、特に気にすることはありませんでした。ご主人様にとっては大切な娘であり、私にとっても大切な方だからです。
最初は無反応なキテラ様でしたが、お世話をしていくうちに、少しずつですが反応を見せるようになり、何かを言うようになります。はじめのうちは「あっ」「うっ」などの声だけでしたので、私は徐々に話しかけるようになっていきました。すると少しずつ言葉を覚えてくるようになり、ついにはご主人様を認識し挨拶するようになりました。あの時のご主人様の喜んだ顔は今も覚えています。
ここにいる私は幸せです。母に捨てられ、奴隷のような日々から私は救われたと今も思っています。
ですがそうした幸せはもうすぐ終わりを迎えます。キテラ様のために私の体が必要になったからです。ご主人様は話したことを後悔したみたいですが、むしろ話してくれてよかったと思います。
私はご主人様に命を救われ幸せを与えてくれました。この命がご主人様のために使われるのであれば、私は後悔しません。この命、喜んで捧げましょう。




