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夫を奪ったアイドルの娘が、なぜか私を「ママ」と呼んだ。  作者: 熊猫ぱんだ


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信じられない真実

「真白、本当の誘拐犯は……蓮なの」


その言葉で。


橋の上の時間が止まった。


「……何を言ってるの」


私は百合子を見る。


首を横に振る。


「そんなわけない」


蓮も呆然としていた。


「俺が……?」


掠れた声。


「誘拐?」


百合子は苦しそうに頷いた。


「正確には」


少し間を置く。


「あなた自身は、そう思っていなかった」


私は息を止める。


「どういう意味?」


その時。


年配の警察官がUSBメモリをノートパソコンへつないだ。


「映像を再生します」


全員が画面を見る。


映っていたのは。


三年前。


病院の駐車場。


赤ちゃんを抱いた私。


まだ退院したばかりだった。


「……私」


私は画面に釘付けになる。


その時。


映像の中へ一台の車が入ってきた。


運転席から降りたのは。


蓮だった。


「……嘘」


蓮も画面を見つめたまま動かない。


映像の中の蓮は。


私に近づき。


赤ちゃんを抱いた。


笑っている。


優しく。


幸せそうに。


そして。


私も笑っていた。


「これ……」


記憶にない。


まったく。


百合子が静かに言う。


「退院の日よ」


映像は続く。


私が忘れ物を取りに病院へ戻る。


ほんの数分。


蓮だけが赤ちゃんと残った。


その時だった。


助手席のドアが開く。


星乃ゆめ。


映像の中のゆめは。


赤ちゃんを見るなり泣き崩れた。


何かを必死に話している。


音声はない。


だから内容は分からない。


しかし。


次の瞬間。


蓮が赤ちゃんをゆめへ渡した。


私は息を呑んだ。


「違う……」


蓮が画面を見ながら首を振る。


「そんなことするはずがない」


映像では。


ゆめが赤ちゃんを抱いたまま車へ乗る。


蓮も運転席へ戻る。


そして。


車は走り去った。


私は画面を見つめたまま動けなかった。


「蒼……」


百合子は静かに言った。


「あなたが病院から戻った時」


「蓮はこう言った」


私は震えながら聞く。


「何て……?」


百合子は目を閉じた。


そして。


ゆっくり口を開く。


「赤ちゃんが息をしていない」


世界が止まった。


私の呼吸も止まる。


「嘘……」


涙があふれる。


百合子は頷いた。


「あなたは気を失った」


「その間に」


震える声。


「死亡診断書が偽造された」


橋の上が静まり返る。


蓮がその場に崩れ落ちた。


「違う……」


両手で頭を抱える。


「違う」


苦しそうに叫ぶ。


「俺はそんなこと……!」


その瞬間。


パソコンから新しい映像が流れた。


車内のドライブレコーダー。


音声付き。


映像の中で。


蓮が泣いていた。


『ゆめ……返そう』


橋の空気が変わる。


ゆめの声が聞こえる。


『もう少しだけ』


『お願い』


『この子がいれば、生きられるから』


映像の中の蓮は。


何度も首を振っていた。


『一日だけだから』


『明日には返す』


そして。


映像はそこで終わった。


誰も何も言えない。


百合子が静かに呟く。


「その一日が」


涙を流しながら。


「三年になったの」

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