表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夫を奪ったアイドルの娘が、なぜか私を「ママ」と呼んだ。  作者: 熊猫ぱんだ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/85

敵を間違えていた

「君は十五年間、ずっと敵を間違えていた」


橋の上に冷たい風が吹いた。


私は蒼を抱きしめたまま、その男を睨んだ。


「……何を言ってるの」


男は表情を変えない。


「そのままの意味だ」


私は首を振る。


「あなたたちが私から子どもを奪った」


「紬を監禁した」


「私の人生を壊した」


怒りで声が震える。


「今さら何を言われても信じない」


男は静かに頷いた。


「当然だ」


その返事は意外だった。


言い返してくると思った。


「だから証拠を見せよう」


男はスーツの内ポケットから、小さなUSBメモリを取り出した。


警察官がすぐに受け取る。


「これは?」


「十五年前から三年間の記録だ」


橋の空気が変わる。


百合子の顔色が一瞬で変わった。


「それを……まだ持っていたの」


男は百合子を見る。


「捨てられなかった」


その一言には、少しだけ後悔が滲んでいた。


年配の警察官が口を開く。


「中身を確認します」


男は頷く。


「かまわない」


そして私を見た。


「そこに映っている私は、あなたにとって最低の人間だ」


数秒、沈黙する。


「だが」


苦しそうに続けた。


「全部ではない」


私は何も言えなかった。


その時。


百合子がゆっくり私の前へ歩いてきた。


「真白」


震える声だった。


「お願い」


私は顔を上げる。


「その映像を見ても」


涙を浮かべながら言う。


「私まで嫌いにならないで」


胸が締め付けられる。


「……お母さん」


その呼び方が自然に口から出た。


百合子は目を閉じる。


涙が一筋こぼれた。


その時だった。


橋の反対側から、若い警察官が走ってきた。


「警部!」


息を切らしながら叫ぶ。


「倉庫を捜索した結果、新しい事実が分かりました!」


全員が振り向く。


「地下室がありました!」


私は息を止める。


地下室。


紬が閉じ込められていた場所?


警察官は続ける。


「生活していた形跡があります」


「それだけじゃありません」


声が震えていた。


「壁一面に写真が貼られていました」


私の胸がざわつく。


「誰の写真ですか」


若い警察官は、ゆっくり答えた。


「真白さん」


空気が止まる。


「あなたの写真です」


私は凍りつく。


「子どもの頃から現在まで」


「何百枚も」


誰も言葉を発しない。


そして警察官は、最後に一枚の写真を差し出した。


「この写真だけ、別に保管されていました」


私は震える手で受け取る。


写っていたのは――。


二十年前。


まだ幼い私。


そして隣で笑う、小さな男の子。


首元には、私と同じ三日月形のあざ。


写真の裏には、手書きで一行だけ書かれていた。


『真白と蓮 再会の日まで』


私はゆっくり写真から顔を上げた。


蓮も、その写真を見つめたまま動かなかった。


そして震える声で呟く。


「……俺たち、子どもの頃に会っていたのか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ