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夫を奪ったアイドルの娘が、なぜか私を「ママ」と呼んだ。  作者: 熊猫ぱんだ


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いなくなった

「ゆめ!!!」


蓮の絶叫が廊下に響いた。


私は反射的に玄関を見る。


その声は。


怒りじゃない。


恐怖だった。


本気で焦っている声。


「……何があったの」


誰に言うでもなく呟く。


すると。


ドアの向こうで慌ただしい足音。


蓮が走っている。


何かを探している。


そんな音。


「ゆめ!」


もう一度。


今度は遠くなる。


エレベーターの方だ。


そして。


静かになった。


私は息を止める。


いなくなった。


ゆめが。


その時。


スマホ。


男から新しいメッセージ。


『最悪です』


心臓が跳ねる。


続けて。


画像。


私は開く。


そして。


血の気が引いた。


監視カメラ映像。


倉庫。


古い建物。


入口。


そこに。


一台の白い車。


そして。


運転席から降りる女。


──星乃ゆめ。


「……っ」


紬が悲鳴を飲み込む。


顔色が消える。


男から続けてメッセージ。


『場所がバレました』


空気が凍る。


『蒼くんを連れて行く気です』


私は立ち上がった。


迷いはなかった。


「行く」


紬が顔を上げる。


涙目。


でも。


強く頷いた。


「うん」


その時。


男から電話。


私はすぐ出た。


雑音。


荒い呼吸。


走っている音。


「聞いてください」


男の声。


今までで一番焦っていた。


「時間がない」


「蒼は無事?」


沈黙。


一秒。


二秒。


そして。


「今は」


その“今は”が怖い。


「真白さん」


男が続ける。


「一つだけ言います」


私は息を止める。


「蒼くんは」


長い沈黙。


そして。


低い声。


「あなたのこと覚えてます」


世界が止まった。


「……え?」


「写真を持ってます」


涙が出そうになる。


「毎日見てた」


私は言葉を失う。


知らない。


会ったこともない。


でも。


その子は。


私を覚えている?


その時。


男が続けた。


「だから急いでください」


雑音。


車のドアが閉まる音。


「ゆめさんは」


少し間。


「もう止まりません」


その瞬間。


通話の向こうで。


女の笑い声。


小さい。


でも。


はっきり聞こえた。


ゆめ。


男の顔色が変わる。


「まずい」


「何!?」


男が叫ぶ。


今までで初めて。


感情を露わにして。


「真白さん来ないで!!」


空気が止まる。


「え?」


次の瞬間。


ゆめの声。


電話の向こう。


すぐ近く。


笑っていた。


「見つけた」


通話が切れた。


部屋が静まり返る。


私は凍りついた。


すると。


紬が震える声で言った。


「ママ」


「……何」


紬は泣いていた。


でも。


今までで一番確信していた。


そして。


小さく言った。


「ゆめママ、蒼を殺す気だよ」

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