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夫を奪ったアイドルの娘が、なぜか私を「ママ」と呼んだ。  作者: 熊猫ぱんだ


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壊れた女

「ゆめママが、一番壊れる日」


紬の声は震えていた。


私はスマホを握ったまま固まる。


さっきの叫び声。


演技じゃない。


本気だった。


今まで聞いたことのない声。


「あの女だけは嫌」


その言葉だけが頭に残る。


私だけは嫌。


なぜ?


その時。


スマホが震えた。


新着メッセージ。


送信者。



短い。


たった一文。


『今から行く』


私は思わず立ち上がる。


「だめ」


紬が即座に言った。


真っ青な顔。


「パパ、一人じゃない」


「え?」


紬の目が揺れる。


そして。


小さく言った。


「ゆめママも来る」


背筋が冷える。


こんな時間に?


警察まで来たのに?


でも。


今のゆめなら。


やる。


そんな気がした。


その時だった。


ブブッ。


また通知。


今度は。


星乃ゆめ


私は息を止める。


開く。


そこには。


たった一枚の画像。


エコー写真。


以前送られてきたものと同じ。


でも。


今回は違った。


真ん中に。


大きく赤い文字。


『返せ』


鳥肌が立つ。


異常だ。


完全に。


紬が画像を見た瞬間、顔色を失った。


「……これ」


「え?」


紬の唇が震える。


「未来で最後に見たやつ」


空気が止まる。


「最後?」


紬の目に涙が浮かぶ。


「うん」


震える声。


「ママが消える前」


胸が締め付けられる。


また。


消える。


その言葉。


その時。


電話。


今度は非通知。


私は迷った。


でも。


出る。


数秒。


無音。


そして。


女の笑い声。


小さい。


でも。


背筋が凍る。


「ふふっ」


私は何も言えない。


その声。


ゆめだった。


でも。


今までの声じゃない。


壊れてる。


「真白さん」


優しい声。


なのに。


怖い。


異常なほど。


「おめでとうございます」


私は息を止める。


「……何が」


沈黙。


そして。


ゆめが笑った。


「赤ちゃん」


鳥肌が立つ。


「私、ずっと欲しかったんです」


声が震えている。


泣いているみたいだった。


でも。


笑ってもいる。


「なのに」


少し間。


「なんで、あなたなんですか」


私は何も言えない。


すると。


ゆめの声が急に低くなる。


「知ってます?」


空気が変わる。


「蓮さん」


静かな声。


怖いくらい。


「診察券見た時、泣いたんですよ」


胸がざわつく。


「ずっと欲しかったから」


私は目を閉じる。


苦しい。


何もかも。


「でも」


ゆめが笑う。


「もう関係ないです」


嫌な予感。


本能が警告する。


その瞬間。


ゆめが囁いた。


「だって、もう決めたので」


心臓が止まりそうになる。


「……何を」


数秒。


沈黙。


そして。


今までで一番穏やかな声。


まるで。


明日の天気でも話すように。


「真白さんを消すことです」


その瞬間。


玄関のチャイムが鳴った。


──ピンポーン。


一回。


二回。


三回。


異常なほど連続で。


そして。


ドアの向こうから聞こえた声。


「真白!」


蓮。


でも。


その直後。


別の声。


泣きながら笑う声。


「開けてください」


星乃ゆめだった。

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