表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夫を奪ったアイドルの娘が、なぜか私を「ママ」と呼んだ。  作者: 熊猫ぱんだ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/85

全部思い出した

「私、全部思い出した」


紬の声が震えていた。


でも。


今までと違う。


怯えだけじゃない。


何かを決めた顔。


私は思わず紬を見る。


「……何を?」


紬の目に涙が溜まる。


でも。


今までみたいに混乱していない。


はっきりしていた。


「私」


小さい声。


「未来から来たんじゃない」


空気が止まった。


「……え?」


頭が真っ白になる。


だって。


未来の娘だって。


そう言って。


未来のこと知ってて。


全部当たってて。


なのに?


「どういうこと?」


紬が唇を噛む。


苦しそう。


でも。


逃げない顔だった。


「未来の話」


少し間。


「半分、本当」


私は息を止める。


「半分……?」


紬が頷く。


「未来じゃなくて」


涙が落ちる。


「“聞いた話”だった」


混乱する。


意味が分からない。


その時。


モニターの向こう。


男が、静かに言った。


「やっと思い出したか」


紬がびくっと震える。


「黙って」


涙声だった。


男は気にしない。


感情のない声。


「真白さん」


静かに続ける。


「その子、賢いんですよ」


ぞっとする。


言い方が気持ち悪い。


まるで。


飼ってたものみたいな。


「ニュースも見てた」


「SNSも見てた」


「ゆめさんの話も、全部聞いてた」


私は凍りつく。


「……何を言いたいの?」


男は少しだけ首を傾げる。


そして。


静かに言った。


「その子、“未来”を作ったんです」


空気が止まる。


「え?」


紬が泣きながら首を振る。


「違う!」


でも。


男は続けた。


「あなたに信じてもらうため」


「助けてもらうため」


「死ぬほど怖かったんですよ」


紬が崩れそうになる。


「ごめんなさい……」


涙声。


「ごめんなさいママ……」


胸が締め付けられる。


怖かったんだ。


助けてほしかった。


信じてもらいたかった。


だから。


未来の娘だって言った?


でも。


じゃあ。


未来の話は?


あんなに当たったのは?


その時。


紬が顔を上げた。


涙だらけで。


震える声。


「でも、本当にあったの」


「え?」


「未来じゃない」


少し間。


「ゆめママが言ってた」


呼吸が止まる。


「“次はこうする”って」


空気が変わる。


「ママを悪者にして」


「パパと結婚して」


「私を消して」


涙が止まらない。


「全部、聞いてた」


私は言葉を失った。


未来じゃない。


──“計画”だった。


だから当たった。


全部。


その時。


男が、初めて少し苛立った顔をした。


「余計なことを」


低い声。


モニター越しでも分かる。


空気が変わった。


怖い。


本気だ。


その瞬間。


遠くのサイレンが近づく。


男が舌打ちした。


初めて感情が出た。


「時間切れか」


玄関前の女が慌てる。


「どうします?」


男は少し考えて。


そして。


最後に。


まっすぐモニターを見る。


私へ。


静かな声。


でも。


今までで一番怖かった。


「ゆめさんの妊娠、嘘ですよ」


心臓が止まる。


「……え?」


その瞬間。


男が続けた。


「でも、本当に妊娠してる相手は別にいます」


空気が凍る。


「誰……?」


男は、小さく笑った。


初めて。


はっきり。


そして。


警察の足音が近づく中。


最後に言った。


「あなたですよ、真白さん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ