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夫を奪ったアイドルの娘が、なぜか私を「ママ」と呼んだ。  作者: 熊猫ぱんだ


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隠されていた子ども

「……隠されてた」


私は言葉を失った。


紬の目には涙が浮かんでいた。


でも。


本人も混乱してる顔だった。


「待って」


私は深呼吸する。


落ち着け。


整理。


未来。


失踪。


死亡扱い。


そして。


隠されていた?


「どういうこと?」


紬が額を押さえる。


苦しそうだった。


「最近、少しずつ思い出してるの」


「思い出す?」


頷く。


「未来、最初ぼんやりだった」


小さい声。


「でも変わってきてる」


未来が変わってる。


その影響?


私は黙って聞く。


「私……どこかにいた」


紬が震える声で続ける。


「暗い部屋」


背筋が冷える。


「狭くて」


「窓なくて」


私は息を呑んだ。


まさか。


そんな。


「誰か来てた?」


紬が小さく頷く。


「女の人」


空気が止まる。


「……ゆめ?」


紬がすぐ首を横に振った。


「違う」


そして。


震える声で言った。


「知らない人」


鳥肌が立つ。


知らない女。


暗い部屋。


子ども。


失踪扱い。


嫌な想像しか出てこない。


「何で隠されてたの?」


紬の顔が曇る。


そして。


ぽつり。


「邪魔だから」


呼吸が止まった。


また、その言葉。


邪魔。


私にも言った。


紬にも?


「誰に言われたの?」


紬が唇を噛む。


「……ゆめママ」


怒りで頭が熱くなる。


何なの。


この女。


どこまで。


「理由は?」


紬はしばらく黙っていた。


思い出しているみたいに。


苦しそうに。


そして。


小さく言った。


「……似てるから」


「え?」


紬の目が揺れる。


怖そうだった。


「私が」


少し間。


「ママに」


空気が止まった。


私は紬を見る。


確かに。


言われてみれば。


少し似てる。


目元。


笑った時の口元。


でも。


まさか。


「ゆめママ」


紬が震える声で言う。


「嫌だったんだと思う」


「何が?」


紬の目に涙が溜まる。


「パパが……私見る時」


小さい声。


でも。


はっきり。


「たまに、“ママ”見てたから」


胸が締め付けられる。


蓮。


未来で。


少しでも後悔してた?


それとも。


罪悪感?


でも。


それが理由で子どもを?


そんなことある?


その時だった。


ブブッ。


スマホが震える。


私は反射的に身構える。


またゆめ?


でも。


違った。


知らない番号。


SMS。


開く。


そして。


血の気が引いた。


画像。


暗い部屋。


古いベッド。


ぬいぐるみ。


そして。


小さい女の子の後ろ姿。


年齢は十歳くらい。


──紬に似てる。


文章。


『探してるんですよね?』


喉が詰まる。


次。


『未来は、もう始まってます』


スマホを落としそうになる。


何これ。


誰?


どうして。


紬が画面を見て、凍りついた。


顔色が消える。


唇が震える。


そして。


小さな声。


「……ここ」


「え?」


紬の目から涙が落ちる。


震える指。


画像を指差して。


「私がいた場所」

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