表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夫を奪ったアイドルの娘が、なぜか私を「ママ」と呼んだ。  作者: 熊猫ぱんだ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/85

110番

──最悪。


その声は、小さかった。


でも。


はっきり聞こえた。


今までの弱々しい声じゃない。


泣いてる声でもない。


冷たい。


苛立ってる。


本音。


私は凍りついた。


……やっぱり。


この人、演技してた。


ドアの向こう。


数秒、沈黙。


そして。


蓮の焦った声。


「ゆめ?」


しまった、と思ったのか。


次の瞬間。


また弱々しい声に戻る。


「……ごめんなさい、私のせいで」


鳥肌が立つ。


切り替え早すぎる。


怖い。


本当に怖い。


その時。


電話の向こう。


警察の落ち着いた声。


『住所を教えてください』


私は震える声で住所を伝えた。


『今、相手は玄関の外ですか?』


「……はい」


『危険を感じますか?』


私はドアを見る。


大きな音。


怒鳴り声。


脅し。


怖い。


でも。


それ以上に。


もう蓮が何するか分からない。


「怖いです」


正直に言った。


『分かりました。すぐ向かいます』


その瞬間。


玄関の向こうで。


蓮の声が変わった。


少し低くなる。


「真白」


怖いくらい静かだった。


「……警察呼んだの?」


息が止まる。


聞こえてた。


私は答えない。


でも。


沈黙が答えになった。


数秒。


静かだった。


次の瞬間。


──ドン!!


今までで一番強い音。


玄関が大きく揺れた。


紬がびくっと震える。


「真白!!」


蓮の怒鳴り声。


「ふざけんな!!」


「ゆめ妊娠してんだぞ!!」


「警察なんか呼んだらどうなるか分かってんのか!?」


私は反射的に後ずさる。


怖い。


本当に怖い。


電話の向こうの警察が、少し声を強めた。


『ドアから離れてください』


『絶対に開けないでください』


私は紬を抱き寄せながら離れる。


その時だった。


ゆめの泣き声。


「……もう帰りましょう」


弱々しい声。


でも。


私は見逃さなかった。


モニター。


ゆめが、ちらっとスマホを見た。


そして。


小さく舌打ちした。


一瞬。


本当に一瞬。


泣いてない顔。


冷たい顔。


苛立ってる顔。


でも。


すぐ戻る。


「私が悪いんです……」


蓮が慌てる。


「違う。お前悪くない」


「全部真白が──」


そこで。


遠くから音がした。


──ウゥゥゥゥン。


サイレン。


小さい。


でも近づいてる。


紬が顔を上げた。


「……来た」


ドアの向こうも静かになる。


蓮が舌打ちした。


「……は?」


ゆめの声。


小さい。


でも焦っていた。


「蓮さん、まずい」


空気が変わる。


初めて。


向こうが焦ってる。


私は震えながら、モニターを見る。


蓮が険しい顔をしていた。


そして。


ゆめ。


さっきまで泣いてたのに。


──無表情。


冷たい目。


そのまま。


まっすぐモニターを見た。


私と目が合った気がした。


そして。


小さく口が動く。


今度は、はっきり見えた。


「覚えててくださいね」


背筋が凍る。


直後。


エレベーターの音。


廊下の向こうから足音。


男性の声。


「警察です」


その瞬間。


蓮の顔色が変わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ