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夫を奪ったアイドルの娘が、なぜか私を「ママ」と呼んだ。  作者: 熊猫ぱんだ


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裏アカウント

「……これ」


紬の指先が震えていた。


画面を見つめる顔は、怯え切っている。


「ゆめママの裏アカ」


私は息を止めた。


鍵付きアカウント。


名前は適当な英数字。


プロフィール画像も風景。


フォロワー数は三百くらい。


どこにでもあるアカウントに見えた。


でも。


投稿内容が異様だった。


『もう限界』


数時間前の投稿。


『人の幸せ壊したい人っているんだね』


その下。


リプライ。


『誰ですか? 大丈夫?』


『ゆめちゃん守る』


『最低な人いるんだね』


私は眉をひそめる。


名前も出してない。


でも。


読めば分かる。


“誰か”を悪者にしてる。


そして次の投稿。


時刻は十分前。


つまり。


さっき家に来た後。


『赤ちゃん守らなきゃ』


『怖くて泣いちゃった』


その下。


コメント。


『え、奥さん?』


『何されたの?』


『特定する』


胃が冷える。


怖い。


怖すぎる。


「……これ、本当にゆめなの?」


紬が頷いた。


「未来でバレた」


「どうやって?」


「写真」


私は画面を見る。


よく見ると。


投稿された空の写真。


マグカップ。


ネイル。


どれもそれっぽい。


でも。


一枚だけ。


紬が指差した。


「これ」


鏡越しの自撮り。


顔は隠れている。


でも。


スマホケース。


私は目を見開いた。


今日、蓮のスマホ通知に映っていた。


あの白いリボンのケース。


同じ。


「……ほんとだ」


鳥肌が立つ。


つまり。


今。


目の前にある。


このアカウント。


星乃ゆめ本人。


しかも。


私を悪者にしてる。


既に。


「最低」


声が低くなる。


紬が少しびくっとした。


でも。


私は止まらなかった。


「私、何もしてないよね?」


震える声。


悔しかった。


「何もしてないのに、なんで私が加害者なの?」


涙が滲む。


でも今は泣きたくなかった。


泣いたら負けな気がした。


「ママ」


紬がそっと私の手を握る。


「前より強い」


私は少し笑った。


強い?


そんなことない。


本当は怖い。


苦しい。


今すぐ全部投げ出したい。


でも。


未来を知ってしまった。


この子がいる。


私は死ぬ。


そんな未来。


絶対に嫌だ。


「証拠、集めよう」


紬が顔を上げる。


「え?」


「裏アカも、録音も」


私は深呼吸した。


怖い。


でも。


感情で動いたら負ける。


向こうは準備してる。


だったら。


私も準備する。


「……弁護士」


ぽつりと呟く。


紬が目を丸くする。


「ママ、前は相談しなかった」


私は苦く笑った。


未来の私は、きっと優しかったんだろう。


信じたかったんだろう。


でも。


もう無理。


蓮も。


ゆめも。


信用できない。


「ちゃんと戦う」


その時。


ブブッ。


通知。


また?


私は身構える。


でも。


次の瞬間、固まった。


送信者。



メッセージは短かった。


『明日、昼空いてる?』


その下。


もう一通。


『ゆめと三人で病院行くから、一緒に来て』


数秒、意味が分からなかった。


病院?


何で?


私は画面を見つめる。


すると。


さらに通知。


『赤ちゃん、本当にいるって確認してほしい』


空気が止まった。


紬の顔色が、一瞬で変わる。


真っ青。


震える声。


「だめ……」


「え?」


紬が必死に首を振る。


「病院、絶対だめ」


小さな声。


でも。


次の言葉で、空気が凍った。


「そこから全部、おかしくなる」

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