24ホログラム
虹色の鳥の羽ばたきは可能性の広がりを示している。美しい歌声は未来への希望を奏でていそう。
虹色の鳥から得たインスピレーションを元に、未来を予測する魔導具の設計に取り掛かった。
「虹色の鳥は色々な色を持っているけど、どれも調和が取れていて美しい。未来も同じように色々な可能性が、素晴らしい未来になるはず!」
工房で設計図を広げた。今回は過去の情報を分析する悠久の書庫の技術を応用し、未来の可能性を視覚化することを目指した。
「未来は過去の延長線上にあるとは限らない。様々な要因が複雑に絡み合い、予測不能な変化が起こる可能性もある。あらゆる可能性を考慮し、多角的な視点から未来を予測する必要がありますわ」
母が構想に真剣な表情で助言を与えた。未来予知に関する古代の文献を調べ、キャロルに伝えた。
過去のデータ、現在の状況、未来に起こりうる様々な可能性を考慮し、複雑な計算式と魔法で解析する魔導具未来鏡の設計に取り掛かった。
魔導具は水晶玉のような形をしており、未来の可能性が様々な映像やグラフとして映し出される仕組みだ。
より正確な未来予測を行うために、虹色の鳥の歌声に含まれる魔力を解析し、未来の情報を読み取る機能も加えた。難しい。
工房には様々な種類の魔力水晶、複雑な計算を行うための魔力回路、未来の情報を視覚化するためのホログラム投影装置などが並べられた。
予測された未来が曖昧だったり、矛盾する情報が現れたりすることもあったが諦めなかった。未来をシミュレーションできる魔法の予言書の作製には、家族全員がそれぞれの得意分野で貢献してくれる。ありがたい。
「未来に興味があるか、アンケートを取ってみたよ!世界の平和とか、魔法の発展とか、色々な希望があるみたい」
ミーチェはどんな未来を望んでいるのか、熱心に聞き取り調査を行ってきた。どんな未来を提示すれば、人に希望を与えられるのか細かく観察し伝えてきた。皆に礼を言う。
「ありがとう!みんなが笑顔になれるといいな」
ユミスは公爵家の所有する古文書の中から、未来予知に関する記述や歴史がどのように変化してきたのかについての記録を調べてくれた。細かくわかりやすい。
「歴史を分析することで、未来の可能性を絞り込むことができるかもしれませんわ。大きな転換期には未来が大きく変化する兆候が現れることが多いようです」
ユミスの言葉に感化され、過去の歴史から未来のパターンを読み取るための新たな魔力解析システムを開発した。
ソフィアはキャロルたちが作った試作品の未来鏡をじっと見つめる。言葉は少ないものの、映し出される未来の映像から良い兆しと悪い兆しを敏感に感じ取り、キャロルに教えてくれた。
繊細な感受性は魔導具の精度を高める上で、非常に重要な役割を果たした。
お父様は遠征で得た珍しい魔石の中から、未来の情報を読み取る力を持つものや精神を保護するための結界を張る力を持つと言われるものを探し出してくれた。素材は魔導具に安全性と正確性をもたらした。
数ヶ月後、美しく輝く水晶玉と複雑な魔力回路が組み込まれた台座からなる神秘的な、魔導具運命の羅針盤を完成させた。
完成披露の日、公爵家のお屋敷の広間はこれまでにないほどの緊張と期待、畏敬の念に満ちた空気に包まれていた。未来を知りたいと願う人々が集まっている。
「それでは皆様、新たな魔法の道具と、未来への旅の始まりです!運命の羅針盤!」
告げると、部屋の中央に置かれた運命の羅針盤の水晶玉が虹色の光を放ち始め、魔力を込めると水晶玉の中に様々な未来の可能性が映像やグラフとして映し出された。人から見たら分かりやすい。
来場者は息を呑み光景に引き込まれていった。代表者の一人に未来の映像を体験させると人物は驚きと感動、畏怖の念が入り混じった表情を見せる。プレゼンだけど、そんなに変?
「これは……!本当に未来の映像なのか!?信じられない……すごい!」
体験した人物は言葉を失っていた。
「未来は一つではない……おお!様々な可能性が、ここに示されている……さすが!」
科学者は興奮を隠せない様子だった。運命の羅針盤は瞬く間に世界中に広まった。魔導具を国の政策決定や企業の経営戦略、個人の進路選択に活用する。なんでも使えるだろう。
未来の可能性を知ることで慎重に責任ある行動を取るようになり、世界はより平和で繁栄した方向へと進んでいった。
「羅針盤で、私たちがどんな大人になるか見てみようよ!面白いことになると思うな〜」
ティータイム、ミーチェが目を輝かせる。
「ええ、いいですわね。未来の可能性を知ることは成長にも繋がるでしょう」
ユミスが笑う。
「キャロルお姉ちゃん、今度はどんなすごい世界を見せてくれるの?」
ソフィアがバラのジャムを塗ったパンを大事そうに抱えながら、キャロルを見上げた。美味しいみたいでよかったよ。
「幸せになれるものはまだあるからね」
キャロルはそ満足げに笑った。家族みんなが自分たちの発明でこんなにも幸せそうに暮らしているのを見て、虹色の鳥との出会いも人生に新たな彩りを添えてくれた。心には新たな夢がある。
「故郷に帰れるかもしれない……!」
キャロルの言葉に家族全員が驚きと少しの寂しさと、新たな冒険への期待が入り混じった表情を見せた。彩り豊かな冒険はまだある。というか、言葉足らずだった。
「繋がる魔法の扉を開発してみようかなって。そうすれば故郷から迷い込んできた人たちを故郷に帰してあげられるかもしれないから!」
「えぇぇぇぇ!?」
驚いた声を上げた後、満面の笑顔で大喜び。公爵家の屋敷のリビングで発明について考える。キャロル自身は世界での生活がすっかり気に入っていたし、家族との絆も深く、発明が世界を豊かにしている実感があったから帰る気はない。
運命の羅針盤で未来の可能性をシミュレーションできるようになったキャロルはある日、羅針盤が示す映像に心を奪われた。
見慣れない制服を着た人たちが、困惑した表情で森の中を彷徨う姿。




