23図書館
過去の偉人たちと直接話すことができれば歴史の真実を学び、未来をより良くするためのヒントが得られるはずだと考える。
「歴史の教科書だけじゃなくて、実際に時代を生きた人たちから話を聞けたら、もっと色々なことが分かる。それに、伝説の英雄と会ってどんな風に世界を変えたのか、直接聞きたい」
キャロルは工房で設計図を広げた。時間と記憶や意識を高度に操作する、これまでで最も壮大な挑戦。
「キャロル、過去の偉人たちと交流することは歴史の改変や、精神への過度の負担といった危険を伴う可能性があります。過去の記録や魂に触れることは非常に慎重に行わなければなりませんわ」
お母様が構想にこれまで以上に真剣な表情で助言を与えた。
「歴史に影響を与えない。それに、あくまで交流であって干渉はしないようにする」
キャロルは、前世で見たホログラムやAIによる歴史シミュレーションといった技術を思い出した。魔法で再現し、過去の偉人の意識を安全に呼び出す方法を考案。
過去の膨大な情報である書物、絵画、遺物などに残された魔力の痕跡を集め、解析して偉人の意識を再現する魔導具歴史の書架の設計に取り掛かった。
特定の偉人の情報を読み込むことで、人物の生前の知識や思考パターンを仮想的に再現する仕組みだ。
再現された偉人の意識と現代の人間が安全に交流できる魔法の空間知恵の広間も考案した。夢の橋の技術を応用し、精神を安全に過去の空間へと送り込む。
工房には非常に高純度の魔力結晶や複雑な情報解析のための魔力回路、仮想空間を構築するための幻影魔法陣などが並べられた。
キャロルとお母様は日夜、時間、記憶、意識、情報の関係を追求した。時には、再現された偉人の意識が不完全だったり、会話が成り立たなかったりすることもあった。
キャロルの過去の偉人たちと交流できる魔法の空間作りには、家族全員がそれぞれの得意分野で貢献してくれる。
「キャロルお姉ちゃん、みんなが誰と話してみたいかアンケートを取ってみたよ!伝説の騎士とか偉大な魔術師とか、色々な人がいるみたい!」
ミーチェは過去のどの偉人に興味を持っているのか、熱心に聞き取り調査を行ってきた。どんな偉人との交流が喜ばれて学びをもたらすのか細かく観察し、キャロルに伝えた。
「すごい、ミーチェ、ありがとう!みんなが会いたい人に会えるようにするね」
目をキラキラさせたユミスは公爵家の所有する古文書の中から、歴史上の人物の詳しい記録や人物が遺したとされる魔法の痕跡について調べてくれた。
「記述によりますと、偉人たちが特に重要視していた思想や信念は魂の魔力に強く刻まれているようですわ。読み取ることができればより本質的な交流が可能になるでしょう」
偉人の深い思想や信念を再現するために、魔力解析の精度を高めるアイデアを閃いた。
ソフィアはキャロルたちが作った試作品の魔導具をじっと見つめて、言葉は少ないものの再現された偉人の姿をスケッチしたり、人物の感情を汲み取るように、耳を傾けていた。繊細な感受性は魔導具の調整いい。
お父様は遠征で得た珍しい魔石の中から、過去の情報を保持する力を持つものや精神を保護するための結界を張る力を持つと言われるものを探し出してくれた。素材はキャロルの魔導具に、安全性と安定性をもたらした。
数ヶ月後、キャロルたちは部屋全体が光り輝く書庫のような、神秘的な魔導具悠久の書庫のエターナル・ライブラリーを完成させた。歴史の書架と知恵の広間が統合された、時を超えて偉人と交流できる究極の空間。ドキドキする。
完成披露の日、公爵家のお屋敷の広間はこれまでにないほどの知的な興奮と期待、畏敬の念に満ちた空気に包まれていた。国王陛下をはじめにたくさん集まっていた。
「それでは皆様、新たな魔法の道具と、時を超えた学びの誕生です!悠久の書庫と言います」
告げると部屋の中央に置かれた書庫がまばゆい光を放ち、広間全体が古の図書館になったかのように変貌。意識を集中させると、光の中に伝説の賢者と呼ばれる人物の姿が浮かび上がる。
来場者は息を呑み、光景に引き込まれていった。賢者と対話すると賢者は生きていたかのように質問に答え、自身の思想を語り始めた。
「これは……!まさしく伝説に聞く賢者の言葉だ!」
歴史学者は感動で震えていた。
「過去の偉大な戦略家から、直接教えを請えるとは……!」
将軍は新たな戦術のヒントに目を輝く。悠久の書庫は瞬く間に世界中に広まった。魔導具を歴史の学習や知識の獲得、倫理観や哲学を深めるための画期的な手段として活用するようになった。
偉人たちの教えは問題解決に役立ち、社会はより賢明で思慮深いものへと変化する。人類の知性と歴史を未来へと繋ぐ存在として名を刻む。
「今度、みんなで悠久の書庫を使って、伝説の英雄たちの武勇伝を聞いてみない?きっと、ソフィアも喜ぶよ」
ミーチェが目を輝かせながら言った。
「ええ、いいですわね。新たな視点が得られるでしょう」
ユミスが優雅に微笑んだ。
「キャロルお姉ちゃん、ねえねえ!今度はどんなすごい冒険をさせてくれるの?」
ソフィアがバラのジャムを塗ったパンを大事そうに抱えながら、キャロルを見上げた。ちょっと味変している。キャロルは満足げに笑った。
「未来の可能性をシミュレーションできる魔法の予言書を開発してみようかな?そうすれば、これから作る魔導具が世界にどんな影響を与えるのか、事前に知ることができるはずだし」
数日後、キャロルは一人で公爵家の庭を散歩していた。新しい魔導具のアイデアを練るため、静かな場所で思考を巡らせたかったのだ。
「未来を予測するなんて、本当にできるのかな……?でも、もしできるなら」
キャロルが呟きながら、庭の奥へと進んでいくと、今まで見たことのない、信じられないほど美しい鳥が目に飛び込んできた。
鳥は絵具を散りばめたかのように、赤、青、黄、緑……あらゆる色が混ざり合い輝いていた。翼を広げると虹が空に舞い降りたかのようだ。
「きれい……!」
美しさに息を呑んだ。鳥はキャロルの頭上を優雅に旋回し、美しい歌声でさえずった歌声は未来への希望を歌っているかのよう。
「この鳥……もしかしたら」
鳥の姿に未来を予測する魔導具のインスピレーションを得た。




