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レモンピューレー公爵家の四姉妹長女は冒険者貴族の我が家にて楽しく発明します!便利なモノでいつでも快適にグルメだって再現したい  作者: リーシャ


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18天候の杖

「これで世界のどこでも水が使えるようになった」


 ティータイムに淹れたてのハーブティーを飲みながら、満足げに微笑んだ。話しかける。


「ああ、お前のおかげで本当に豊かになったな」


 お父様は優しい眼差しでキャロルを見つめる。


「魔法の道具は、本当にすごいね」


 ミーチェが目を輝かせソフィアも自分の分のクッキーを大事そうに抱えながら、こくこくと頷く。


「水の循環をうまく利用してもっと自然と共存できる方法を見つけたいわね」


 ユミスが今後の展望を語るのを聞き、キャロルは家族みんなが自分たちの発明でこんなにも幸せそうにしているのを見て心から充実感を感じていた。


「んー、水の魔導具を応用して天候をコントロールできる魔導具を開発してみる」


 公爵家の庭で家族みんなで次の発明について話す。


 夕方、公爵家の屋敷はいつもとは違うきらきらした光に包まれ、庭の木々からは鈴を鳴らすような優しい音が聞こえてくる。


「この光は……」


 お母さんが庭の様子を見て目を丸くした。


「もしかして妖精さんかな!?」


 ミーチェが嬉しそうに庭へ駆け出していき、みんなもミーチェの後を追った。


 庭の中心には前に助けた小さな妖精が、仲間たちと一緒に浮かんで妖精たちの真ん中には、ひときわ大きくまばゆい光を放つ存在がいる。綺麗な人が。森の王様のような、威厳と優しさを兼ね備えた妖精がいた。


「わたくしは森を司る妖精王です」


 透き通るような声が庭いっぱいに響き渡る。


「そなたたちがわたくしの愛しい民を救ってくれたこと、心より感謝いたします」


 妖精王は優雅に頭を下げたが、あまりのことに言葉が出なかった。


「温かい心と類稀なる創造の力に、わたくしは深く感銘を受けました。つきましてはささやかではございますが、そなたに恩返しをさせて頂きたいのです」


 妖精王はキラキラと輝く粉をキャロルに向けてまき散らした。


 粉は体に触れると光の粒子のように吸収されていく。


「これは……!?」


 体に温かい力が満ちていくのを感じたのは妖精たちの魔力と自然の力が融合したような、不思議な感覚だ。


「自然の声をよりはっきりと聞き、精霊たちの力を借りやすくなるでしょう。そなたの次の発明、天候を操る魔法の道具の開発にきっと役立つはずです」


 妖精王はにこやかに微笑んだ。


「さらに、わたくしの民の妖精たちもそなたたちの力になることを願っております。今後、困ったことがあればいつでも呼んでください」


 小さな妖精たちがキラキラと光を放ちながら頷いたら、妖精王は再びまばゆい光となって、仲間たちと共に夜空へと消えていく。


 恩返しを受け、天候を操る魔法の道具の開発は一気に加速した。


 妖精王から与えられた力のおかげで風や雨、太陽の光といった自然の魔力の流れを、以前よりもはっきりと感じ取れるようになったのだ。


「風の魔力はこうやって集めて、空気の温度を変えて。そうすると雲ができたり雨が降ったりする」


 工房で設計図を広げ、妖精王から学んだ自然の魔力に関する知識を魔法の道具に応用しようとした。


「地域の風の魔力は季節によって向きが変わるみたい。それに合わせて魔力の流れを調整する必要があるわ」


 母は国の気候や風土に関する詳しい知識を使ってアイデアに具体的なアドバイスをくれた。


「じゃあ、季節ごとに魔力の調整ができるようにこの部分を変えられるようにする」


 季節によって最適な魔力の波長を調整できる、複雑な魔力回路を設計した。


 天気操る魔法の道具の開発には、家族みんなと、妖精たちの協力が不可欠になる。


「雨を降らせたい時は青い魔法の石を使うといいよ!石は水の精霊と相性がいいんだって〜」


 ミーチェは妖精たちが教えてくれた、天気を操るのに役立つ魔法の石や薬草について熱心に調べてきてくれた。


 特定の魔石が持つ天候への影響について妖精たちから直接学んだ知識を伝えてくれる。可愛いよ身内だけど余計に可愛く思えた。


「ミーチェ、いつもありがとう。妖精たちも手伝ってくれるなんて心強いし」


 目をキラキラさせた。妖精たちは、目には見えないけれど、工房の中でキャロルの周りを飛び回り、風の魔力を集めたり、雲の動きを教えてくれたりする。


 ユミスは過去の気象記録や、天候による作物の成長への影響について調査し最適な天候条件を分析した。


「農作物の生育には適度な雨と日照が必要ですわ。あまりに雨が降りすぎたり、日差しが強すぎたりするとかえって被害が出てしまいます。天気予報のシステムも兼ね備えた方が実用的になるでしょう」


 ユミスの言葉にキャロルはハッとさせられ、過去の気象データを記録し、未来の天候を予測できる魔導具天候の予言書の開発に着手した。


 万能情報端末の技術を、応用したもの。ソフィアは工房の外で、空の様子をじっと観察して雲のわずかな動きや風の匂いの変化を敏感に察知し、教えてくれた。


 お父様は地域の天候に関する言い伝えや、古くから伝わる雨乞いの儀式について地元の長老たちから話を聞いてきてくれたらしい。


 知識は魔導具開発に新たな視点と可能性をもたらし、手のひらに収まるほどの先端に小さなクリスタルが付いた、美しい杖のような魔導具天候の魔法杖を完成させた。


 クリスタルは空の状況によって色を変え、輝きを変える魔導具を起動させて空に向かって杖を振ると、クリスタルから放たれる魔力が意思を持つかのように空へと吸い込まれていく。


 杖の動きに合わせて空には雲が湧き上がり、優しい雨が降り始めたり雲が晴れて太陽の光が降り注いだりした。


 完成披露の日、国王陛下をはじめ各国の貴族や農民、漁師、航海士たちが集まる。


 皆、天候に左右される自分たちの生活が魔導具によって大きく変わることを期待しているのだろう。


「天候の魔法杖です」


 告げると、掲げた天候の魔法杖からまばゆい光が広間に満ちていく。


 窓の外の空に向かって杖を振るとそれまで快晴だった空に、みるみるうちに雲が広がり優しい雨が降り始めた。


「雨だ……!本当に雨が降った!」


 長らく日照りに苦しんでいた農民たちは声を上げた。


「これがあれば、嵐の海でも安全に航海できる!」


 漁師や航海士たちも希望に満ちた顔で空を見上げれば、天候の魔法杖は瞬く間に世界中に広まる。

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