16王城から一通の招待状が届いた
これまでは人手と家畜に頼っていた農作業を魔導具の力で自動化するために。
「畑を自動で耕して、種を蒔いて水をやる魔導具が欲しい」
お父様の助言を受けながら広大な領地の地形や土壌のデータを集め、情報に基づいて最適な耕作計画を立てた。
「土地は魔力の流れが滞りがちなの。土壌の魔力を活性化させる必要があるわよ」
お母様は魔法の杖で土壌の魔力検査を行い、キャロルに具体的なアドバイスを与えた。
「なるほど〜。じゃあ、緑の恩恵の原理を応用して、土壌の魔力も活性化させる魔導具を作ろうかな」
土壌に生命の魔力を直接注入し、土壌の肥沃さを高める魔導具大地の活力を開発した。
魔導具を起動させると、地面から柔らかな緑色の光が湧き上がり、土壌が瞬く間に豊かな香りを放つ。広範囲を自動で耕すための魔導具自動耕作機のオートを開発した。
地を這うように移動し、魔力の刃で土壌を深く耕していく動きは滑らかであっという間に広大な畑が整地する。
「種まきと水やりは均等散布器で一気にやる」
魔力を帯びた種子を均一に散布し、必要な量の水を自動で供給する魔導具を開発し、これにより人手の負担は大幅に軽減され、作業効率は飛躍的に向上した。
改革には家族全員がそれぞれの得意分野で貢献してくれる。
「キャロルお姉ちゃん、作物は、特定の魔力が足りないと病気になりやすいんだって。病気や虫対策には、この魔法の石が有効だよ?」
ミーチェは図書館で農学に関する書物を読み漁り、作物の病気や害虫に関する知識を深めていた。特定の魔力を放つことで病害虫を寄せ付けない、魔導具守護の光のアイデアを提案する。
「それなら、農薬を使わなくても作物を守れる。アイデアもらうね」
ミーチェのアイデアを、すぐに取り入れた。
ユミスは、公爵家の経済状況と、領民たちの生活状況を考慮し、最も効率的で持続可能な農業システムを構築するための計画を立てる。
「キャロルお姉ちゃん、作物の収穫量を最大にするためには、運び方も大事だよ。収穫した作物を、いかに早く、効率よく市場に届けるか、そのための魔法の道具も必要になると思うわ」
ユミスの言葉に、ハッとさせられ、収穫された作物を自動で運び出し、貯蔵庫へと運ぶ魔導具自動運搬機の開発に着手した。
ソフィアは、広大な畑で、作物の成長具合をじっと観察し、言葉は少ないものの、植物のわずかな変化や魔力の乱れを敏感に察知し、教えてくれる。
レモンピューレー公爵家は、最新の魔導具を駆使した大規模農業をスタートさせた結果は、誰もが驚くほどの成功だった。
大地の活力で土壌は肥沃になり、自動耕作機と均等散布器で広大な畑を効率的に管理する。
緑の恵みによって作物は瞬時に成長し、守護の光によって病害虫の被害は激減し、自動運搬機によって収穫された作物は滞りなく貯蔵され、市場へと届けられた。
レモンピューレー公爵領は瞬く間に豊穣の大地へと変貌し、何倍もの食料を生産できるようになる。
成功は隣接する他の領地にも大きな影響を与え、世界中に広がっていく。
「き、奇跡だ!こんなに豊かな麦畑は、見たことがない!」
各国の貴族や遠方の商人たちがレモンピューレー公爵領の視察に訪れ、光景に感嘆の声を上げた。
食料不足に悩まされていた国々はレモンピューレー公爵家から最新の農業技術を学び、自国の農業改革に乗り出す。
公爵家の農業改革の成功は王家の耳にも届いていたらしく。
ある日、王城から一通の招待状が届いた。
「レモンピューレー公爵家御一族を、王城にお招きしたいとのことです」
執事が告げるとお父様は驚いた顔をした。王家との謁見は年に一度あるかないかのことだからそうなる。
「まさか、こんなに早くお呼びがかかるとはな……はぁ」
お母様も普段より少しだけ表情が引き締まっている。
「王様って、どんな人なんだろう?」
ミーチェが興味津々に尋ねた。
「王様はね、自分とてもおおらかで、新しいものが大好きな方だ。それに、王妃様も王子様もみんなとても仲良しで、いつも笑顔が絶えないご家庭だと聞いている」
お父様は子どもたちに分かるように、王家について説明してくれた数日後、公爵家は王城へと向かう馬車に乗り込んだ。
普段よりほんの少しだけきちんとした服を着て、ちょっと少し緊張した面持ちで王城の門をくぐる。
頭の中はもしなにかあったら、思いっきり今までの発明品を暴走させないと、という脅迫概念がうっすらある。
王家なんて理不尽なことを言われたら、うちは貴族だから拒否できないよ。でも、王城の謁見の間は想像していたよりも温かい雰囲気だった。
厳かな装飾の中に家族写真のような絵が飾られていたり、王妃様の趣味と思われる可愛らしい花々が生けられていたりする。
玉座に座る国王陛下は威厳はあるものの、どこか親しみやすい笑顔を浮かべ、隣には優しい眼差しの王妃様と活発そうな王子様が座っていた。
「おお、おお、レモンピューレー公爵!公爵夫人!ご息女の皆様もようこそお越しくださいました!」
国王陛下が立ち上がり、温かい声で迎えてくれた声は謁見の間の重い空気をふわりと和ませた。
「陛下におかれましてもご健勝のことと存じます。この度はお招きいただき、誠に光栄に存じます」
お父様が深々と頭を下げた。
「堅苦しい挨拶は抜きにしましょう。国の食料問題が解決されると聞いて、いてもたってもいられませんでした。緑の恵みはまさしくこの国を救う奇跡の魔導具だと確信しております」
国王陛下は興奮したように語り始める。
「陛下、過分なお言葉恐縮でございます」
お母様が微笑んだ。
「緑の恵みを開発したキャロルです」
お父様がキャロルを紹介すると国王陛下の目が輝く。
「おお!あなたが、あのキャロル殿ですか!いやはや、噂には聞いておりましたがこれほど若い方がこれほどの偉業を成し遂げられるとは……まことすごい!」
国王陛下は玉座を降り、キャロルに近づいてきたら孫娘に話しかけるかのように優しく微笑んだ。
「キャロル殿、ありがとう!本当にありがとう!国はあなたの発明によって救われましたっ」
国王陛下は手を両手で包み込み心から感謝の言葉を述べた。
「いえ、そんな……私一人でできたことじゃなくてお父様やお母様、ユミスやミーチェ、ソフィア、みんなが協力してくれたおかげなんですから」
照れながら答えた。
「まあ、素敵なご家族ですわね」
王妃様が優しい声でユミスたちに話しかけた。
「お姉ちゃんの魔法、本当にすごいんだよ!」
ミーチェが得意げにキャロルを指差し、ソフィアも国王陛下の笑顔にこくこくと頷いている。
「キャロル姉さまの魔導具開発のお手伝いをしていますわ」
ユミスがおっとりとした口調で答えたその後、謁見は和やかな茶会へと移った。




