12カルラミネー君のお父様にもプレゼント
紳士の滑らかさが起動すると、微かな振動とともに魔力が髭の根元に浸透していくのが感じられ、数秒後、魔導具を離すと頬は驚くほどツルツルに。
「おおおおお!!これは、剃っていないかのようだ!肌にも全く負担がない!」
感動のあまり声を上げた。肌は赤くなることもなく赤ちゃんのように滑らか。
「これなら、毎日髭剃りが楽しみになりそうですわね!」
お母様もお父様のツルツルの頬を撫でて、嬉しそうに微笑んだ。ミーチェとソフィアも自分たちの作った魔導具が喜ばれているのを見て満面の笑顔。販売も行う。
紳士の滑らかさはたちまち貴族の間で評判となり、瞬く間に世界中に広まった。身だしなみに気を遣う貴族や肌が弱い冒険者たちにとって、魔導具は手放せない存在となった。
公爵家の庭でキャロルはカルラミネー、ユミス、ミーチェ、ソフィアと一緒に心地よい日差しの中でティータイムを楽しむ。テーブルの上にはミーチェが焼いたお父様の髭のようにふかふかのマフィンが並んでいる。
「お父様、毎日紳士の滑らかさを使ってくださっていますわね。とてもお似合いです」
ユミスが微笑むとお父様はツルツルになった顎を撫でながら、満足げに頷いた。
「みんなのおかげで毎日が快適だ!ありがとうな」
キャロルは家族と大切な友人の笑顔に囲まれて、心から幸せを感じていた。
「キャロル様……これほど肌に優しい魔導具ができた今、次は髪を自由自在に操れる魔導具を開発してみたいですね。髪のセットに困ることもなくなるでしょう」
何を作るかという問いに対するカルラミネーの言葉に、キャロルはニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「キャロル様、実は父が紳士の滑らかさについて大変興味を持っているようでして……」
カルラミネーが少し申し訳なさそうに切り出した。視線はキャロルが手にしている紳士の滑らかさに向けられている。公爵家の庭で二人は新しい魔導具の構想を練っていたところ。
「え、そうなの?嬉しいな。どんな風に興味持ってくれてるの?」
自分たちの作った魔導具が誰かの役に立っていると聞くのは、何よりの言葉。
「はい。先日、父がレモンピューレー公爵の髭が以前にも増して滑らかになったことに気づきまして。理由を尋ねると紳士の滑らかさのおかげだと仰ったそうです。それから父は毎日のように魔導具について質問してくるのです」
苦笑いしながら説明した。カメリア公爵は魔法研究の第一人者として名高いが、身だしなみにはあまり頓着しないタイプだと聞いていたのに髭剃りに興味を持つというのはよほど紳士の滑らかさが衝撃的だったのだろう。
「ふふ、あなたのお父様もきっと気に入ってくださるし、よし、じゃあカルラミネー君のお父様にも、プレゼントしようよ」
笑うとカルラミネーは驚いたように目を見開いた。
「え!?よろしいのですか!?父もきっと喜びます!」
週末、レモンピューレー公爵家はカメリア公爵家を訪れた今回の訪問は以前の改まった挨拶とは違い、もっと家族ぐるみの和やかな雰囲気。
「カメリア公爵様、この度は先日完成したばかりの紳士の滑らかさを、ぜひお試しいただきたく参上いたしました」
キャロルがお父様から受け取った紳士の滑らかさをカメリア公爵に手渡した。カメリア公爵は普段は冷静沈着な学者だが、この時ばかりはどこか子供のように目を輝かせて魔導具を受け取る。
「これは……噂に聞く、あの魔導具ですね。ありがとうございます、キャロル様。早速、試させていただきましょう」
カメリア公爵はその場で紳士の滑らかさを起動させ、微かな魔力の振動とともに頬を覆っていた髭が、あっという間に消え去っていく。
肌は若返ったかのようにツルツルになり、顔全体が明るく見えた。
「おおお!これは驚いた!肌への刺激が全くない!しかも、この滑らかさは……」
自分の頬を何度も触り、感触に感動しているようで、普段はあまり表情を変えないが、心底嬉しそうな顔をしている。
「父上、いかがですか?」
カルラミネーが尋ねるとカメリア公爵は大きく頷いた。
「素晴らしい!髭剃りがこれほど快適になるものとは!キャロル様、あなたには驚かされるばかりだ」
公爵は心からの賛辞をキャロルに贈った褒め言葉。
公爵が紳士の滑らかさを気に入り、快適さを周囲に語り始めたことで研究仲間や交流のある貴族たちの間でも話題に。髭剃りで肌荒れに悩んでいた者たちからは絶賛の声が上がる。
レモンピューレー公爵家とカメリア公爵家の交流はこれを機にさらに深まった。
お父様とお母様はカメリア公爵夫妻と、領地開発や魔法研究の協力について具体的な話を進めるようになり、キャロルとカルラミネーは共同で魔導具開発に没頭する時間が増える。
「お父様、最近とてもお顔がすっきりしていらっしゃいますわね!」
ある日の夕食時、ユミスが微笑みながら言った。お父様もツルツルの顎を撫でながら満足げに頷く。
「キャロルとカルラミネー君のおかげだ。毎朝の髭剃りがすっかり楽しみになったよ」
嬉しそうに笑った隣ではカルラミネーも少し照れくさそうに微笑んでいる。ミーチェはお父様の顔がツルツルになったことで、お父様のお顔をモデルにした新しい絵を描き始めていた。
ソフィアも絵を熱心に覗き込み、楽しそうに頷いている。公爵家は新しい友人との出会いによってますます温かい雰囲気に包まれていた。
すでに次のアイデアが頭の中に渦巻いている。
「カルラミネー君、この紳士の滑らかさ、もっと面白くできないかな?」
工房でキャロルは完成した紳士の滑らかさをくるくると回しながらカルラミネーに尋ねた。視線はキャロルの手元にある魔導具に向けられている。
「面白い、ですか?すでに素晴らしい性能だと思いますが……?」
首を傾げた意見はもっともだ。すでに紳士の滑らかさは革命をもたらすほどの完成度を誇っていた。
「うーん、なんていうか……もっと五感に訴えるというか使うのがもっと楽しくなるような追加機能が欲しい」
使っていたアロマ付きのシェービングクリームやパーソナライズされた美容家電を思い出した。




