8,夏休み目前~ミオの日常~
部活現役の時は練習がしんどいと思ってたのに、いざ引退となると、もっと続けていたかったと感じる不思議現象ってあるよね。
「ミオ。おはよっ」
「おはよ~。メイちゃん」
中学校の教室に入ると、すぐに友達が挨拶をくれた。
「英語の宿題やった?教えてほしいんだけど」
「いいよ~。フッフー!自信アリだよ!」
「最近調子いいみたいだね!授業でも英語に限らず、数学も歴史も先生に当てられてもスグ答えてるもんね!」
そんなメイちゃんの言葉に、周囲のクラスメイトもウンウンと頷いて同意している。
「受験生だからって塾に通い始めたとか?」
隣の席の男子生徒ハル君が首を傾げながら聞く。
「塾には通ってないよ。成績が落ちたら行くようにとは両親に言われてるけどねぇ」
「じゃあ成績を落とさないように頑張ったってこと?スゴいね!」
ハル君はそう解釈して目を見張る。
―――おおっぴらには言えようはずもないが、成績アップしたのは、やはり魔法が使えるようになった事が関係している。
魔力がまだ少ないので、常時発動はさせる事が出来ないが、短時間であれば身体強化が可能となったので、家庭学習している時に活用していた。
なぜ身体強化かというと、脳が活性化して、記憶力が増大するからだ。
おかげで短時間での効率的な学習が容易となり、成績が上がったのである。
そして体育の授業でも、モチロン活躍していた。
今までも運動神経はいい方だと周囲からも認識されていたが、最近はキレが違うと注目され始めた。
大人っぽい美人が多いと定評のある学年において、子猫のような愛らしさがあるミオは、他とはタイプが違うが可愛らしく、密かな人気があった。
同性である女の子からも、しょっちゅう頭を撫でられている。
それを見た男子生徒は、自分もナデたい!と心の中で強く思うのであった。
そして本日の授業が全て終わり、女子バスケットボール部の部室へと行く。
先月の地区大会で3位だったため、県大会へは進出できず、そこでミオ達3年生は引退となった。
背が高い方が断然有利なバスケットボールでは、ミオのような155cmの身長は小さく不利だ。
だが持ち前の素早さを武器に、相手を撹乱し、正確なシュートで点数を上げた選手であった。
引退したにもかかわらず部室へ向かうのは、下級生による招待で『お疲れ様会』(言葉は悪いが、通称『追い出し会』と呼ぶ)が開催される為だ。
お茶やジュース、ちょっとしたお菓子が並び、思い出話しに花を咲かせて盛り上がる。
そして後輩からの感謝の手紙で泣かされるまでが、例年のお決まりの流れである。
その後は二次会のカラオケへと行く。普段は寄り道が禁止されているが、今日は特別に部活顧問の許しが出ている。(但し羽目を外さないことが大前提)
するとカラオケ店で、男子バスケットボール部の面々と遭遇した。
どうやら向こうも同じく二次会らしい。
仲のいい相手がいる女子部員は、一緒にカラオケしようと意気投合していた。
ミオは特に知り合いの男子部員がいるわけではなかったので、女子のみのグループだ。
「私こんなの持ってきてみたのよ~。ミオちょっとコッチにおいで~」
コイコイと手招きされたので、元部長のリカちゃんの前へ行く。
「はい、ウィッグ!あと、つけまつ毛とお化粧をして・・・と!で~きた!!」
「うわ!可愛いです!先輩!」
「本当に!お人形みたいです!」
後輩達は頬を赤く染めながら褒める。さらに他のカラオケルームにいる部員も呼んで来る始末。
鏡を見せてもらうと、ライトブラウンのロングヘアのウィッグをつけ化粧をしたミオは、普段の黒髪のボブヘアとは全く違う印象になり、別人のように大人っぽくなっていた。
皆でキャッキャ言いながら携帯で写真を撮った後、そのままの状態で歌った。
「ミオだって判らないだろうし、動画アップしてもいい?」
そんな軽いノリでアップされた動画が、後にアリエナイほどの再生数を叩き出すとは、ここにいるメンバーの誰も予想していなかったのである―――。
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