5,気になるアイテムボックスの中身アレコレ
何が出るかな~?
今日は日曜日である。普段ならば、ゆっくりと寝坊をする至福の時間が待っているハズだった。
「なんでお母さんと兄さんが部屋にいるのー?」
話し声が聞こえ目を覚ますと、何故か2人がいた。
「だってねぇ。お兄ちゃんとも話をしたんだけど、ミオちゃんのアイテムボックスに何が入ってるのか、スゴ~く気になっちゃったんだもの~」
「そのとーり!」
マイルームというプライベートスペースに入り込んだ2人は、悪びれずに口を揃えた。
そこへ半開きだった部屋のドアから、トシヤが顔を出す。
「ご飯作ったよ。一緒に食べようか」
なんと今日は父の手作り朝食がいただけるらしい。
「今行くし!」
布団をガバッと剥がして飛び起き、シュタっとベッドから床に着地する。
アイコとケンはトシヤに続いて部屋から出た。
ミオは慌ててパジャマから部屋着に着替え、食卓へと急いだ。
白米のご飯にワカメの味噌汁。カリカリベーコンが添えられた半熟目玉焼き。
『いただきます!』
キチンと手を合わせてから食事をとる。白米の甘い香りと、ワカメの味噌汁が食欲を増進させる。
ちなみに目玉焼きには、ただの醤油ではなく、味醂や鰹出汁などをブレンドした特製のものをかける。
ミオが配合したマイ醤油を常備しているのだ。
「お母さんにもちょうだ~い」
「ボクもいいかな?」
「あっ。俺もー」
このやや甘いブレンド醤油を作ったところ、家族全員ただの塩辛い醤油は敬遠しがちになり、常に切らさないように作り続けるようになった。
朝食後、ナゼかミオの部屋に集合した。
「ダイニングでもよくない?」
ミオの言葉は黙殺された。
「さぁ~て。ミオちゃんのアイテムボックスには何が入っているのかしら~?」
ウキウキとした様子を押さえもせず、アイコは部屋の中央に置かれたテーブルに手をつく。
正方形のテーブルを家族で囲み、さぁさぁと、アイコはミオを急かす。
「逆に何が見たいの?」
「どういったモンが入ってるんだ?」
「色々だよー。薬に本、魔道具に武具、家具もあるよ?」
「危険な物は出さないでね?」
トシヤは黎明の魔女の伝説を知っているために、やや顔を引きつらせる。
「モチロンだよ!」
ミオも真顔で答える。
前世は魔女とはいえ、まるで映画の登場人物の物語を観たような感覚でいるため、ミオは魔女に必要以上の感情移入はしていなかった。
故に、ぶっ飛び過ぎた人生や、ヤバい魔道具の所持については、他人事のようにドン引きである。
「あー。そういえば魔物素材だけじゃなく、魔物丸ごと保存もしてあるよ。ドラゴンとかは大きさの関係で、出せる場所が無いけどね」
「マジか!ゴブリンとかってあるのか?」
興奮気味にケンが食い付くが、ミオとトシヤは微妙な顔をする。
「あれは日本人の感覚では耐え難い容姿をしているよ。見たら夢で魘されるかも知れない」
「キモい。マジでキモい」
「あらあら、そんなに~?」
嫌がるトシヤとミオに、ケンはさらに要求する。
「少しだけ試しに見せてくれ!」
「えぇー・・・」
渋々ミオは取り出そうとする。
トシヤはアイコの隣に座り、そっと肩を抱き寄せた。
ゴブリンを見て恐慌状態に陥らないようにするための措置であろうか。
手で触りたくないミオは魔法で浮かせる準備をする。
魔力操作に集中し発動した。
「ギャアァァァっっっ!!!!!」
ケンの悲鳴が響き渡る。
ご近所迷惑にならないように、防音結界を発動済みである。
「兄さん五月蝿い!耳が痛いし!」
至近距離で悲鳴を聞いたミオは顔をしかめた。
「お兄ちゃんは小さい頃から、オバケとか苦手だったものねぇ~」
トシヤにピッタリと寄り添ったアイコは、ほのほのと微笑みつつ、思い出した事実を告げた。
ホラーゲームや映画も好きなアイコはダメージが無さそうだ。
トシヤは青ざめている。
アイコの肩を抱き寄せたのは、妻のためではなく、自分の心の平穏を保つ為だったらしい。
ゴブリンはどす黒い赤紫色で、皺クチャなエイリアンのような姿をしていた。
映画とは違い、圧倒的な質量をもって存在し、なんなら多少の臭みも感じる。
「早く!早くしまって!片付けてくれぇー!」
もう涙目である。
「アイテムボックスには、もっとキモいのがいっぱい詰まってるよ」
若干遠い目をしたミオは、フフっと力なく笑った。
実際には存在してなくてよかった!




