34,レイルズ商会の飲食店オープン予定
祖父と伯父達は午後から仕事が入っており、日本へと帰国した。
その際に異界門ではなく、ミオが転移魔法で芦屋神社まで直接送ると、理解が追い付かないような、あるいは呆れたような顔で見られた。
「規格外じゃな」
ハァ。と息を吐き、やれやれといったふうに首を振り、肩や腰を伸ばしてから歩き出すアヤヒコ。
「向こうは興味深かった。今度はトシヤの薦める図書館へと行ってみたい」
「いや~。スゴかったなぁ!ミオ、また連れてってくれな!」
カイトとサトシはエターナリアに関心を持ってくれたようで、次回の約束をさせられた。
「うん!もちろんいいよ。またね!」
ミオはニコッと笑い、クルリと踵をかえすと同時に転移する。
瞬きひとつする間に消えたミオを見て、『この世には不思議な出来事があるもんだなぁ』と考えるアヤヒコ達。
だが自分達も常人ならざる力の持ち主であるのを自覚していない……。
ケンとイツキは予定通りに冒険者活動へ、テトを連れて出発した。
今回はリスの姿に変化したトールもついて行ったようだ。
ミオはフィルと一緒に帝国のダンジョンを目指す。その前にフィルは、ベガへと日本土産の和菓子を届けていた。
フィルがグランドマスターの部屋へと行っている間に、ギルド内の掲示板を見て時間を潰していると、馴染みのある声で話しかけられて振り向く。
「嬢ちゃん!国へと帰ったんじゃ無かったのか?!いや~っ!よく来た!!」
ゲイツに肩をベシベシと叩かれてよろけるミオ。
「イタっ!ちょっと叩かないでよーっ」
「おう。スマンスマン。こんなに早く会えて嬉しかったもんだからよぅ!……ところで、食いもんって今持ってるか?また売って欲しいんどけどなぁ」
ポリポリと頭を掻きながら、ちょっぴり都合悪そうに訊ねるゲイツ。
「今回はあんまり持ってないよ。でもねレイルズ商会にレシピ公開して、ここの帝都に飲食店をオープン予定だよ。いつでも買えるようになるからね!」
『マジでっ!!』
ミオの言葉にゲイツだけでなく、ギルド内で2人の会話に聞き耳を立てていた冒険者達が一斉に反応をした。
声を上げ、ガタンッ!!と席を立つ音を響かせる。
「その店はいつオープンするんですか?」
冒険者としては少し大人しそうな見た目、良く言えば気品のある佇まいの、たしかノートルという人がゲイツの隣に立ち、ソワソワとしている。
(よっぽどハンバーガーを気に入ったんだね)
ノートルはハンバーガー購入の常連だったので、ミオも覚えていたのだ。
「実は来週にはオープンするの。広告チラシも持って来たからどうぞ!割引券付きだから、このチラシをお店に持って行くとお得だよ」
ノートルやゲイツにチラシを渡すと、周囲の冒険者達も寄ってきたので配る。
視線を感じて振り向くとカウンター越しに、ギルド職員達も興味を引かれたように身を乗り出していた。
「オープンしたら、ぜひご贔屓に~!」
順番に配布して、ある程度落ち着いてから、ギルド内の壁にも飲食店のチラシを張らせてもらう。
これで宣伝はバッチリだ!
ミオはウンウンと頷く。
「センセイお待たせ~。じゃあ行こうか」
フィルは珍しく大人の人族の姿で歩いている。ミオに抱えられている以外は、幼竜のままでは移動に時間がかかるためだ。
ゲイツ達が「誰だ?」 と疑問に思っているようなので、「フィルだよ」と教えると驚かれた。
「またね!ゲイツさんにノートルさん!」
ミオが手を振ると、
「うわっ!聞いたかゲイツ!俺の名前を覚えてくれていたようだぞ!!」
「ハイハイ。私じゃなく俺になってますよ~」
ノートルが感動した面持ちで、ゲイツの背中をバシバシと叩いている。
小声だったのでミオには内容は聞こえなかったが、手を振り返されたのでそのまま立ち去る。
冒険者達はチラシを見て、「オープンしたら何を買おうかなぁ!」と、盛り上がっていた。
チラシにはメニューと値段が書かれており、主要商品にはイラストもあり、とても分かりやすい。
しばらく冒険者ギルド内は騒々しくなっていて、何も知らずにギルドに入って来た冒険者達を困惑させたが、壁に張られた飲食店のオープンチラシを見て、自分達も買いたいと言いながら、次々と嬉しさで興奮していた。
そして【お一人様1枚まで】と書かれた箱に入っているチラシを手に取り、店が出来たらどれを注文しようかと悩み始めた。
しばらくガヤガヤと騒がしくたむろする冒険者達だったが、グランドマスターであるベガが現れて一喝される。
「喧しいぞ!!さっさと仕事に行けっ!!」
竜人族の威圧と咆哮を受けた面々は、蜘蛛の子を散らすように出て行った。
「まったく!」
そうブツクサと呟くベガの右手にはチラシが握られており、どこか足取りも軽くグランドマスターの執務室に戻るのを、複数の職員に見られているのだった。




