29,来ちゃった☆
実力テストの返ってきた答案用紙の点数も、前回よりも大幅ダウンすることもなく、何とか乗り越え一安心するミオ。
明日はようやく週末となり、エターナリアへと渡るのを許されている日なので、頭の中はすでに異世界での活動計画でいっぱいだ。
むふふ。とニヤケていると、隣の席のハル君に声をかけられた。
「ねえ、ミオ。トカゲ飼ってるの?」
「……はい?」
何を言っているのか。
机に肘をついて妄想の世界へと羽ばたいていたミオは現実に引き戻されるとともに、急にそんな台詞を言われて戸惑った。
ハル君の視線が、ミオの机の横にかけられているスクールバッグに向けられている。
つられてそちらを見て、ミオは固まった。
チャックの隙間から、手の平に乗る程の大きさになったフィルが顔を覗かせていた。
「・・・・・・」
汗がタラリと伝う。
『何で此処にいるの!』
『来ちゃった☆』
フィルが念話で、テへっと悪びれもせずに伝えて来た。
『コッチの世界にドラゴンとかいないんだから翼は隠して!トカゲになりきって!話もしちゃダメ』
『そうなんだね!わかったよ』
顔しか見えていなかったのが幸いして、新種の生き物とか騒がれずに済んだ。
「あー、そうなの。潜り込んでるのに気がつかなかったよ!ビックリした!」
「大人しいんだね。トカゲって初めて近くで見たよ。触ってもいい?」
「うん。いいよ」
バッグのチャックを開け、フィルを右手だけで掴み上げる。
「ん?」
ミオは再び固まった。フィルの隣に、見慣れぬモモンガがいた。
『クレイも一緒に遊びに来たんだよ。センセイにほったらかしにされて、淋しくてご飯も喉を通らなかったみたいだよ。可哀想でしょ!』
『えぇぇ……』
『申し訳ありません。マザー……あっイエ、ミオ様』
『マザーでいいじゃない。僕だって、センセイはずぅーっとセンセイなんだから。好きな方で呼んだらいいんじゃない?』
『で、ですが……』
チラッと視線を寄越すクレイ。
『いいよ。呼びたい方で』
『あ、ありがとうございます!』
パッと顔を上げ、嬉しそうに瞳を輝かせる。
だが、その姿はモモンガだ。
(可愛いが過ぎる!!)
ミオはもう片方の手でクレイをバッグから出し、机の上に乗せた。
「トカゲがフィルで、モモンガがクレイっていう名前だよ。いつの間にかついてきちゃったみたい」
「うわー。モモンガ!可愛いね!」
ハル君は先程の宣言通りに、トカゲとなったフィルを撫でながら、モモンガのクレイを見て声を上げた。
「えっ?なになに!!」
「うわっ!カワイイ!」
「私にも触らせて!」
「ミオのペットがついてきちゃったんだって!」
クラスメイトが沸き立ち、あっという間に囲まれる。
「ウチの子達は大人しいから、どうぞ触ってもみて」
『もうこうなったら皆の好奇心が満たされるまで撫でられときなさい!』
ミオは念話で2人に伝える。
『は~い』
『分かりました』
その後、担任教師にもバレて、厳重注意を受けるミオであった。




