27,スタミナポーションガブ飲みで徹夜明け
(あぁ……世界が眩し過ぎる)
ミオは寝不足でまともに目が開けていられない。まばたきを繰り返し、気を抜くと閉じてしまいそうになる目蓋を気合いで持ち上げ、登校路をヨロヨロと歩いていると、後ろから声をかけられた。
「ミオおはよっ!どーしたの?腰痛持ちのウチのおばあちゃんみたいな歩き方して」
スパーンっと背中を叩かれ、ミオはよろめいて前につんのめる。
「あうっ。ヒドイよ、メイちゃん」
「ゴメンゴメン。なんでそんなにヘロヘロになってるの~?」
「宿題を始めるのがちょーっとばかし遅かったから、ここ3日位まともに睡眠取ってないんだよ」
「そうなの?でも頑張って終わらせたカンジ?エライじゃん!わたしは諦めたわー。まあ、後で提出すればいいっしょ!」
「え"?」
どうやらメイちゃんは宿題が終わっていないらしい。しかもたいして気にしていない・・・だと!?
上には上が……いや、この場合は、下には下がいると言うべきか。
その図太い精神は別のところで発揮して欲しいものである。
そういえばメイちゃんは、普段の宿題もよくやっていないなぁ。去年の2年生の時までは、そんな事は無かったハズなんだけど。
(何か悩みでもあるのかな?)
「メイちゃんは頭がいいのに、どうしちゃったの?」
「うーん。なんかね、勉強しようとすると、どうでもいいような小さな事が気になりはじめて、宿題が手につかないんだよねぇ。急に掃除とか部屋の片付けとかしたくなっちゃったりするんだぁ~。なんでだろ?」
「ストレスじゃん。え、今から受験生ストレスなの?メイちゃん。なにかきっかけとかあった?悩みがあるなら相談してね!?」
「うーん。ストレス~?そんな実感は無いけど、最近ダルいんだよねぇ」
ある意味、寝不足でフラフラになっているミオよりも質が悪い。精神面が弱っているのか、それとも何か原因があるのか。
ミオはこっそりと医療鑑定してみた。
【雨宮メイ : 14歳】
【状態 : 魔力欠乏症】
「ふぁっ!?」
「うわっ!ちょっとミオ。なんで変な叫び声だしてんのよ。ビックリしちゃうでしょ!」
調子が良くないのは貧血だからかな?と軽い気持ちで調べてみたら、思わぬ鑑定結果が出て驚いた。
地球では魔力を持つ人は少ない。それに魔力があったとしても、回復するための空気中の魔素がエターナリアと比較すると非常に少ないのだ。
ミオのように結晶化した魔力で創った宝玉など持っているわけもなく、また、魔力回復ポーションがこの世界には無い為、魔力欠乏症の治療は見込めない。
もしも地球で発症してしまったら、ずっと原因不明のダルさが続いてしまうのだ。
(どーしようかなぁ……でも見て見ぬふりも出来ないなぁ。幼稚園の頃からの友達だし。よーし!ここは特別に……)
「ねぇ、メイちゃん。御守あげるよ。肌身離さず持っててほしいなー!」
「ふふっ、ナニ急に。ん?芦屋神社の御守?ミオのお父さんの所の?」
「そうそう、健康祈願。元気が出るよ!」
「ん~?まぁ心配してくれてるの嬉しいし、貰うねぇ?」
「うん!いっつも持ってて!」
その御守には【魔力回復(小)】の魔法を付与しておいた。キチンと身につけておけば、魔力欠乏症の症状は改善されるはずである。
学校で始業式の後に、すぐに通常の授業が始まり、日常が戻って来た。
休み明けすぐの明後日、実力テストがあるため、クラスでの会話は夏休み中のバカンスの話題等では無く、受験生らしく夏期講習の内容や、宿題、それにテスト対策について、あちこちで話されている。
夏休みの宿題ですらギリギリまで忘れていたミオは、実力テストの勉強もモチロンやっていない。
(ヤバイ。成績が落ちたら塾に通わされる!)
焦る気持ちとは裏腹に、眠気がピークのミオは机に突っ伏している。
夏休み終了間際の3日間は、スタミナポーションと眠気覚ましの薬湯をお茶代わりに飲み、徹夜で過ごした。
おかげで宿題は無事に片付き、事なきを得たが、反動が今来ているのだ。
(シンドイ……)
眠気と闘い、苦痛を堪え忍んだ休み明けの学校の1日目が終わり、グロッキー状態のミオは、何処へも寄り道せずに帰宅した。
ここ最近はずっとエターナリアでダンジョンに潜っていたが、日本では学校と家の行き来だけで、ほぼ勉強漬けの毎日を送る事になる。
とりあえずは、少し休んだらテスト勉強しなきゃ。
(疲れたから今日はオヤスミ~)
スャァ……。と寝付きも良く、オヤスミ3秒で眠りにつくミオであった。




