24,Aランク冒険者との共闘
初級ボス部屋を攻略したミオとフィルは、ダンジョン攻略を進めて行った。
宝箱はボス部屋だけでなく、ダンジョンの壁の隠し棚の様な箇所にもあり、遭遇する魔物を倒した時のドロップ品と合わせて、かなりの数を入手する事が出来た。
防御力の上がるネックレスや魔物避けのアミュレット、ポーション各種に魔物素材。
それぞれの鑑定をすると、同じ品でも効能差があったりして、フレーバーテキストの内容をチェックするだけでもスゴく楽しい!
今度パソコンでアイテムボックスの中にある物の一覧表を作成したいなぁ。印刷すればきっと分厚い辞典並みのアイテム図鑑が仕上がるに違いないよっ!
コレクター心くすぐる想像を巡らせつつも、敵をサクサク倒して進む。
地下20階のボス部屋では3メートルはあろうかという巨体の馬頭の魔物が居た。
黒毛で赤い瞳、筋骨隆々たる巨躯の魔物は、片方が尖った戦鎚を所持しており、振り回すと突風と雷が轟音とともに巻き起こる。
どうやらマジックアイテムの類いらしいその武器は、重量もあり完全に使う者を選ぶ業物だろう。
フィルは楽しげにちょこまかと逃げ回り、ミオはマジックシールドで迫り来る雷撃をいなす。
手加減されたフィルのブレスで注意を逸らし、死角からミオが素早く接近したところで氷の槍を撃ち込み心臓を貫き倒した。
ベテラン冒険者のパーティーでも手こずる相手を、まるで簡単な流れ作業をこなすように討伐する様を見たら、このダンジョンに潜っている中堅冒険者以下は自信を失くしてしまうのではないだろうか。
だがそんなのはお構い無しに、2人はご機嫌でハイタッチをして勝利を祝う。
今回ドロップしたのは【戦鬼の雷鎚】と【憤怒のベルト】。
戦鬼の雷鎚は、やはりマジックウェポンで、風と雷の魔法が付与された物だ。魔術と違い呪文を唱える必要が無く、冒険者が喉から手が出る程に渇望する武器だ。オークションにかければ凄まじい値段がつくに違いない。
憤怒のベルトは呪われそうな名前ではあるがそんな事はなく、力が増強される効果を持っているマジックアイテムであった。これを装備していれば、戦鬼の雷鎚を振り回す力が得られるようだ。
今まで入手したことの無いアイテムをアイテムボックスに仕舞い、ホクホク顔で先へと進む。
地下25階では坑道のような通路が分岐しており、採掘出来そうな場所が複数存在している。
ミオはちょっと広くなっている所で、魔法で硬化されたツルハシを取り出して採掘を試みた。
鑑定でチェックしながら行ったので、鉱石が簡単に掘り起こせた。
鉄がダンジョンの魔素により【魔鋼】と呼ばれる鉱石へと変異したものがザクザクと出てきたので、テンションが上がったミオは夢中になって掘り、アイテムボックスへとどんどん放り込んだ。
石を掘るのはどうしてこんなにも人をワクワクさせるのだろう。
実は小さい頃日本でも、祖父の神社の境内の縁の下に潜り込んで遊んでいた時に、スコップで赤土を掘り起こしていると、小さな水晶の結晶が出てきてビックリしつつ感動した記憶がある。
その水晶を兄に自慢して見せたら、「ズルい!俺も欲しいっ!」と騒ぎ、その後2人であちこち掘って穴だらけにして祖父に怒られた。
赤土の近くにあった砂場には直径5cmほどの蟻地獄の巣が複数あり、無邪気にアリを落として遊ぶという、子供ながらに残酷な遊びをしていたのも思い出した。
まぁそれはさておき、キラキラ光る鉱石も欲しいなぁ。と、周囲を見渡したが、この階には無さそうだ。
あっという間に次のボス部屋がある地下30階に到達した。ここに来るまでに2日かかっているが、通常は1か月かかってもおかしくはない。この早さの要因はやはり、ミオ達の魔法のゴリ押しによるものだ。
ここからは上級冒険者のみが進める階層になる。
通路を進んでいると、フィルが反応を示した。
「センセイ、人がいるよ。数は3人だね。あっ、向こうも気がついたみたい」
少し歩くと、ボス部屋前の広い空間に出た。その扉の前には30代に見える男性が3人。
「こんにちはー」
ミオは物怖じせずに右手をあげて挨拶をした。左手のみで抱えられているフィルは、視線を3人の冒険者から離さずに沈黙している。
「オーッす!チビッ子と子ドラゴン。2人だけか?他のメンバーは?」
一番大柄な剣士の男性が、ミオとフィルの左腕に装着している腕輪を見て、ドラゴンがテイムされた獣魔だと判断した後、キョロキョロと周りを確認しながら質問してきた。
「私達2人だけだよ」
「ん?マジで!?アブねぇだろう?って、無傷どころか汗もかいてねぇみてぇだから、実力は充分なのか」
剣士は腕を組み思案したようだが、すぐにコチラの実力を見破る。
流石はこの階層まで来るだけの力がある冒険者だ。
「魔力反応を見るに、魔物でも無さそうですしね」
杖を持った魔術師の男性も冷静に言う。
「でも何歳だ?まだルーキーじゃないのか?」
弓を手にしている男性は、まだ少し心配しているようだ。
荒くれ者が多い冒険者だが、このメンバーは常識人かつ人格者のようだ。こちらを気遣う様子が窺える。
「悪意はカンジられないね。センセイ。この人達は敵では無いね!」
じっと見つめていたが、どうやらフィルのお眼鏡にかなったようだ。
「ボス部屋へはこれからですか?私とフィルはのんびりと休憩して待ちますね。お気を付けて!」
ボス部屋への挑戦は先着パーティー順である。
ミオ達は次に挑戦しようと思い、先に挑む彼らへとエールを贈る。
「んー。チビッ子達だけだと心配だな。ここは初チャレンジなんだろ?俺達は何度も闘ってるからなぁ。……どうだ?一緒にボスに挑んでみるか?」
剣士がミオ達に共闘を持ちかけてきた。
「ガルウィン。お前な、自己紹介も無しにグイグイ行き過ぎだぞ。女の子もビックリしてるじゃないか」
「そうですよ。ラルクの言う通りです。見ず知らずの男が強引過ぎです。全く、申し訳ない。ガルウィンは娘が出来てから、ちょっと心配性気味になってしまって。悪気は無いんですよ?ああ、名乗りが遅れました。魔術師のタイラーです。剣士はガルウィン。弓士はラルクです。怪しい者ではありません。私達はこれでもAランク冒険者なんですよ」
タイラーは簡潔に自己紹介を済ませ、敵意は無いと示す。
「私はミオです。この子は黒竜のフィル。2日前に冒険者登録をしました!宜しくお願いしまーす!」
「はぁ?じゃあEランクか!?ってか2日前に登録って……!何の冗談だよ。そんな短時間にここまで来れるワケが―――」
ガルウィンが何やら混乱しているが、心配させ過ぎてもいけないと考えたミオは話を遮りぶっちゃけた。
「あー。私達は魔法使いなんで!」
「「「え!?」」」
Aランク冒険者達の声がハモった。
「魔法使いですか………!初めて対面しました……」
タイラーは呆然と呟き、ラルクもそれに続く。
「え?魔法使いって本当に実在するの?確か各国が不用意の接触とか、不躾な要求とかしたら罰則を与えるって法律がある……」
「マジか。すげぇな!それじゃ大変だろ。俺達もAランクになったとたんに、色んな奴等が利用しようと近づいて来たけど、魔法使いなら例え罰がどうとか言われても、実感もなくて取り込もうとする輩が沸いて出てるんじゃないか?」
ガルウィンは不憫な子を見るような目をした。
―――高ランカーになると妬みもあったり、またお零れにありつこうとする鬱陶しい連中がいるようで、悩みの種らしい。
「そっかぁ。お金持ちになると、顔も知らない親戚が増えるって聞くもんねぇ」
ミオがそう言うと、そのセリフがツボに入ったのか笑われた。
「ブフっ!そうそう。全く面識の無かった遠縁が急に沸いて出てな?鬱陶しいったらねぇんだよ。だから小国の出身だったけど、Aランクの尊厳を護ってくれるって評判の帝国に引っ越して来たんだぜ!実際に全然違って落ち着いた生活が送れるようになったんだよ。それでも家族の身辺警護の観点から、貴族の居住区に家をかまえる事になったんだけどな!」
ガルウィンは肩を竦めつつ説明する。
出身の国では相当苦労したらしい。
そんな身の上話を聞き打ち解けた所で、ボスへと一緒に挑むのが決定した。
30階のボスは複数のストーンゴーレム。数えてみると12体だった。
「おっと!今までて1番多いんじゃねぇか!?気合い入れていくぜっ!」
ガルウィンは吠えるように言うと、真っ先に突っ込んで行った。
背負っていた大剣をスラリと抜き放ち、振りかぶって打ち下ろす。
深紅の炎が踊るように敵へと絡み付き、ストーンゴーレムが爆散する。
―――たったの一撃であっという間に敵を葬ってしまった。
ミオはポカンと口を開けてその様を見る。
次にラルクが矢を放つと、まるで音速を越えた戦闘機のような轟音が響いた。
目にも止まらぬ早さとはこの事だ。
風の魔法が付与されていると推測される矢を受けたゴーレムは、上半身が吹き飛び崩れ落ちた。
タイラーが呪文を唱えて杖を振ると水の刃が出現して、3体同時に切断される。
そして次々といとも簡単に屠られるゴーレム。
(あれっ!このままだと私の出番が無い!?Aランク冒険者ってスゴい!!)
慌てたミオが指鉄砲を作るようにしてゴーレムを指すと、雷撃が打ち出される。
閃光と爆音が鳴り響き弾け飛ぶ。
ピュー♪とガルウィンが口笛を吹いて囃し立てる。
フィルもブレスを放ち、各個撃破していく。
そして殲滅完了。
―――本当にボス部屋か?といったカンジで、あまりにも容易に決着が付いてしまった。
「ああっ!!本当に魔法使いという存在は呪文を必要としていないのですね!!!どういった原理なのでしょうか!それは私にも修得が可能なのでしょうか!是非ともご指導していただきたいのですが―――」
「コラコラ!タイラー!そういう風に詰め寄るのは良くないよ。迷惑だろ!」
タイラーが興奮して迫り来るのをラルクが止める。
「おおっ!何時も理性的なタイラーが暴走してんな……珍しいもん見たぜ……」
ガルウィンも呆気にとられている。
そしてボスを討伐した報酬タイムがやって来た。
部屋の中央に現れる宝箱。
「ほれっ、ミオ。宝箱譲るから開けろ。おっと、その前にラルク。罠が無ぇかチェックしてくれ」
ガルウィンが言うとラルクが素早く確認する。
「毒矢のトラップがあるな……よし!解除したぞ。ミオ、開けるといい」
「ん?いいの?」
「私達はもっと下の階層からの帰りなんですよ。ここは何となくついでに寄っただけですから、どうぞ遠慮せずに受け取って下さい」
タイラーも勧めてくれたので、ミオはその言葉に甘えて貰う事にした。
だからミオは、ありったけの願いを込めて宝箱の蓋に手を置き、勢い良く開けた。
「収納腕輪来いっ!」
だが願い叶わず、結果はやたらとファンシーなリュックだった。




