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17,サヘリアルのダンジョンマスター

オアシスの復活とサヘリアルの直ぐ近くに新たな水場を完成させた事を伝えると、住民達が歓声を上げて走り出した。

実際に沢山の澄んだ水が湧き出る様を見て、泣き出す人も出る程に喜ばれた。


ハリソンはただ黙ってミオに頭を下げ、カシムはオアシスとミオの顔に交互に視線を送っては、驚愕のあまりに口を開けっ放しにしたまま言葉が出ないようだ。


子供達は早速水に入りはしゃいでいる。

水による事故に気を付けるよう注意するのを忘れてはならない。

魔法使いの言葉に神妙に頷くのは、子供だけではなく大人もだった。

何しろ泳いで遊ぶなど、したことがないのだから…。

溺れて死んでしまう人もいるのだと教えると、首をガクガクと激しく上下させて頷き、特に小さい子をよく見てあげる事を約束してくれた。


飲用水は少し高い位置に、岩を削りだして作った湧水口から流し、台座と水受けを造り、屈まなくても水を汲みやすくした。


水浴びをする場所はキチンと壁で囲い、シャワーの代わりに高い所から少量を流し続ける事によって、見た目は打たせ湯のようになっている。

男女別に利用する為に、文字や色、それに簡単な壁画によって、分かりやすく区別した。

日本人としてのこだわりによって、まるで温泉施設かのごとくである。


「……なんと言ったらよいのか。どうお礼をしたら良いのでしょうか」


ハリソンは眉を下げてオロオロしている。


「お礼なんていらないよ。言ったでしょ。最初からオアシスの復活に来たって。こっちの小さなオアシスはオマケだし!」


基本やりたい事をやっただけなので、感謝されると何だかこそばゆい。だが日本人としては、この感覚が誇らしくも嬉しく感じる。

うむ。くるしゅーない!と、とあるご隠居の様なセリフを心の中で言ってみる。


ハリソンは眩しそうに目を細めてミオを見つめた後に、再び頭を下げた。

隣で慌てた様に一緒になってお礼を言うカシムが頭を上げると、何かに気が付いたように目を見張った。


つられて同じ方を見ると、ジークを先頭に6人が連れ立ってやって来て、ミオ達の前で膝をつく。


「ミオ様。この度はサヘリアルに住まう者達の為にご尽力下さり有難うございます。我が竜人族を代表しまして感謝申し上げます」


……何気に初めて声を聞いたよ。

なんて全然どうでもいいことを考えていた。

そういえばサヘリアルの街は、いくつかの部族が集まって暮らしてるって言ってたっけ。

それにしても、黒髪に金色の瞳の竜人なんて、あの弟子を思い出す。

人族贔屓なあのドラゴンは、今は何処にいるのだろうか。

人族が好きすぎて人化の魔法で人の姿になり、砂漠の民の女性をお嫁さんにもらってしまったあの弟子。

その結婚式に参列したのが、このレーテ砂漠に来た最後になる。約300年前に思いを馳せ、懐かしくなった。

元気にしてるかなぁ~。


「もしかして、ジーク達はフィルガズィールの子孫なの?」


ジーク達は、やはり!といった表情を浮かべ頷く。


「あの子は元気?」


その問いかけには少し顔を曇らせる。


「我が部族の宗主様は、魔法の師である御方の気配がするので会いたいと申しております。どうか聞き入れてはいただけませんでしょうか?」


ふとハリソンとカシムに視線を向けると、2人とも真剣な表情で相槌を打った。


―――罠とかでは無いらしい。


「ええ。分かったわ。案内してちょうだい」


身に纏う魔力をやや強め、アイテムボックスからフローティングボードを出して乗る。


離れて見ていた子供達が、乗りたそうにしているのか、ソワソワしている。

ミオはそんな様子に苦笑いをしつつも、ジーク達竜人と、ハリソンとカシムの後をついて行く。



サヘリアルの街はダンジョンの1階層部分。

2階層は、少しの湧き水が出ている小さな泉と野菜などが栽培されている畑があった。

3階層と4階層は小さな魔物が出るエリアらしい。

そして、5階層が最下層であり、フィルガズィールの住処となっているようだ。


石畳の真っ直ぐな通路を進む。ダンジョンの薄明かりだけではなく、両脇の壁には魔道具のランタンが等間隔で並んでおり、何となくゲームの強敵と闘う直前のような雰囲気を醸し出している。


「こちらが我らが宗主の部屋になります」


そうジークが告げたのは、狭い一本道を抜けた後の大広間の向こうに見える巨大な扉。


ラスボス感パねぇ。


あんぐりと口を開けて見上げてしまった。





ミオだって魔女のダンジョンのラスボスなんだよ。自覚は無いけど。

(ケンは心の中で魔王だと思っている)

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