13,砂漠のオアシスを復活させろ!~その2~
地下の町って浪漫だよね。
「ねぇ~・・・。まだ着かない?」
フローティングボードでフヨフヨと浮きながら、砂漠の民の集落に向かうこと早5時間経過。
自分だけじゃなく、一行全員に暑さ対策の結界をかけながら進む。
(現地人のちょっとそこまで。の感覚は日本人とは合わないよ~)
「あぁ。ごめんね、もうちょっとなんだけど。結界のおかげで皆の負担も軽くなって大助かりだよ。ありがとうねぇ」
カシムは申し訳なさそうに眉をひそめた後で、感謝の言葉を紡いだ。
・・・なんて言うか大人の対応だ。まるで小さい子供が駄々を捏ねているのをあやすかのよう。
このまま文句を言うのも負けな気がする。
しかし、ミオも3日間という限られた時間での自由行動のため、あまり付き合っていられないのも事実。
どうしようかと心の中でウンウン唸っていると。
「あっ。ほら見えてきたよ。あの岩場だよ」
指差した先には砂と同化しそうなやや黄みがかった象牙色の岩山があった。
「お客様を迎えるために準備が必要だから、1人先触れに出すね~」
カシムは柔和な物言いでミオに説明してから、1人に耳打ちして先行させる。
ジークはその様子を見るともなしに眺めていたが、泰然とした構えをくずさぬまま、乗獣の手綱を操り進む。
ミオはそんなジークの隣にボードを並べた。
「集落っていうには岩場?岩山?は、そんなに大きくないし、何人くらい住んでいるの?」
まさかミオに話しかけられるとは思わなかったのか、ジークは目を見張り軽く驚いている。
その様子に気が付いたカシムが、近づいてきた。
「ごめんねぇ。何か問題があった?」
「別に?ただ、何人くらい住んでるのかな?って聞いただけだよ」
「そっか。んーとね、たしか300人くらいだったかなぁ?」
カシムは、んーっと考え込んですぐに人数を言う。
結構多いんじゃない?
「思ったより多いね。そんなに住むスペースがあの岩場にあるの?」
「地下に古代の町の居住地区があるんだよ。僕達はそこに、幾つかの部族と共存して住んでるんだ」
「へぇ~。古代の町を利用してるんだ。そんな所があったんだね!」
砂漠の酷暑に耐えるために、地下に住んでいるのだろう。
(―――それにしても、幾つかの部族が集まって暮らすだなんて、昔では考えられなかったなぁ。砂漠の民は争ってばかりのイメージがあったんだけど)
「それって問題なく暮らせてるの?」
ミオは直球で聞いてみた。
カシムは苦笑いしつつも答えてくれる。
「まあね。問題が無いわけではないけど、何とか話し合いで解決しながら暮らしてるよ」
カシムはヒョイっと、肩をすくめておどけてみせる。
そこから更に30分かけて、ようやく岩場に到着した。
小さな岩の合間をくぐり抜け、大きな岩山の前に着くと、整備された入り口を警備している砂漠の民がいた。
ここで下手にボードから降りてしまうと、延々と自分の足で歩く事になるかもしれない!
そう考えてミオは、ボードを地面スレスレにまで降下させて、這うように滑らせて進む。
一方、カシム達の乗って来た駱駝のような生き物から荷物が下ろされると、別の場所へ移動させるようだ。
荷運人と、生き物担当に別れる。
「さあ、行こうか」
カシムはボードに乗ったままのミオに手を伸ばし、エスコートしようとする。
ミオはその手を取り進む。
ふと違和感を感じた。
「もしかして、ここってダンジョンなの?通路とか、明らかに天然ではないけど、人の手で造られたのとも違う気がする・・・」
「!・・・よく判ったね。そうだね。過去に魔法使いが見つけたダンジョンとされているよ」
通路の地面と壁が薄っすらと発光していて、明かりを灯さなくても不自由なく歩ける。
やや魔力の波動を感じるのは、まだこのダンジョンが活動している証しだろう。
―――では居住地区がある場所は、ダンジョンの安全区域なのだろうか。
「ダンジョンということは、魔物も沸いて出るの?」
住人の安全面は確保されているのだろうか?
「大丈夫だよ~。ここに出るのは小型だけだから。むしろ食料の足しになってるほどさ」
カシムはニッコリと微笑み、安心させるように明るく言う。
入り口から15分ほど進むと、ようやく人の住んでいる場所へと辿り着いた。
そこには、先ほど先触れとして先行していた人の他に、30人くらいの人々が集まっていた。
その中から1人、白髪混じりの砂漠の民の民族衣裳を着た男性が前に出る。
「ようこそ、魔法使い様。私はここ、サヘリアルの地にて、まとめ役をしております、ハリソンと申します。私共の仲間の窮地を救っていただきまして、誠にありがとうございます。つきましては、簡素で恐縮ではございますが、もてなさせて下さい」
ハリソンが頭を下げると、周囲の人々も一斉にお辞儀をする。
「あまり気にしなくてもいいよ。ただのお節介だし。・・・でも今日はここに泊めてもらおうかな。明日からはちょっと調べたい事があるから出るし」
ここでようやくミオは、ローブのフードを取り払う。
砂漠の民達は、意外なものを見た。とでも言いたげな表情を浮かべる。
「魔力の多いお方は、若い姿を保つと申しますからね。とても力のある魔法使い様なのですね!」
ハリソンの言葉に「そうなのか!」などと反応する人々。
ミオは侮られないようにするため、あえて否定せず、そのままにした。
「ミオと呼んでちょうだい」
「畏まりました」
ハリソンを筆頭に、一同は恭しく頭を下げた。




