お題【伝染】
昨日、姉から電話があった。
私が怖い話好きだってことを知っているから話す気になったんだとか、いやでも怖いっていうより気持ち悪い話かもとか、前置きがやたら長くなかなか話し始めない。
もしや大したことない話なのか、それとも出オチなのか。
とにかく話してよと促して聞いたのがこんな話。
姉は保育園で保育士をやっている。
そして夕方くらいに遠雷が聞こえたから、とりあえず外で遊んでいた園児たちを集め、屋内遊びに切り替えたらしい。
はじめのうちはおとなしく絵を描いていた園児たちだったけれど、次第に興奮しはじめ、クレヨンを持ったまま走り出したのだとか。
おともだちの体にラクガキをしようする遊び。
どうやらそれがツボに入ったらしく、キャーキャー叫びながら走り回る。さすがに姉も同僚たちと一緒に止めに入ったんだけど、その間、姉たちの手にもラクガキをされてしまったという。
「どんな絵なの?」
私がそうたずねると、姉は電話口の向こうでなにやら動いている音を立て、こう言った。
「絵って言うか、なんかね……こんな、感じ」
その言葉を聞いた途端、私の手が急にドクンと強く脈打った気がして、私は一瞬、電話を落としそうになった。
「こんな、って……」
見えるわけないじゃない、と笑おうとしたんだけれど、姉がまた。
「こんな、だよ」
その「こんな」に合わせたかのように、私の腕にナニカの気配がぞくりとうごめいた。
「こんな、だよ」
姉が繰り返すその「こんな」に合わせたかのように、私の手は勝手にナニカの模様みたいなのを描いた。
<終>




