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テンプレートが立ちはだかる日常  作者: ひつじ


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続々・禁断の質問:あなたの夫または婚約者が浮気をしたらどうしますか?


《ミモザ・フォン・アイゼンバーグ公爵夫人と夫の場合》


「浮気?お義母様に報告するわ」

「それだけですか?」

「後はお任せしたら良いもの。鉄拳制裁になるのかそれ以外の罰が降るのか、わたくしは一緒に見てたら終わるわ」

「シンプル・イズ・ベスト!て感じですね」

「しん……?」

「ちなみに、お義母様からソフィア様に罰の要望なんかは出さないんでしょうか?」

「要望?そうねぇ、まあ報告するとは言ったけど、わたくしが報告する前に既に使用人達から知らされてると思うのよね」

「あぁ、確かに」

「だから、お義母様が乗り込んでくる時にはもう処罰もお決めになってるはずだわ。顔も見たくないから追放してほしい!とか、二度と悪さをしないように切り落としてほしい!とかお伝えしたら考慮してくださるとは思うけど」

「お義母様、今の流行りは切り落としよりすり潰しですよ」

「まあそうなの?リカルド様、お聞きになって?すり潰すんですって」

「…………そうか…………」

「顔色が悪いわリカルド様。浮気なさったらの仮定でしてよ?」

「……ミュー、シオンの顔を見に行っても良いだろうか……」

「癒やし枠ですか?わかりました。寝てたら起こさないでくださいね」

「わかった……」

「フラフラしてるわね。大丈夫かしら?セザール、ちゃんと見ててね」

「承知しました」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「直接聞くなんて……父上……!」

「セザールも少し青褪めてました」

「それはそうだろう……!」


ルシウス様の声が同情的だ。

そうね、愛する妻から言われたら顔色も悪くなるよね。


「癒やし枠なんて作ったの?」

「自分の番が待てないくらい凹んでる者に、譲ったり交換してる姿を見まして。シオンを見て元気になるならそれもありかと考え、週一で30分です。それ以上癒やしが必要な人は普通に医者に見せます」

「癒やし枠……僕も使える?」

「ルシウス様は無制限で会えるし癒やされてるじゃないですか。枠が必要ですか?」

「そう言えばそうだった」

「戻ってきたお義父様はニコニコでシオンを連れてきてました。『ミューに会いたそうに見えた』と言ってましたが、長く抱っこしたかっただけですよ絶対」

「それだね」

「結局私に会いたいとか言ってて、お義父様とお義母様で構いまくってましたし」

「だろうね」


まあ夫婦仲が拗れなかっただけ良かったと思おう。

シオンもずっとウッキャキャご機嫌だったし。


「さて、お義姉様のお話をしましょう」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


《ローザリア・フォン・レスター公爵夫人と夫の場合》


「離縁して去勢して廃嫡、かしらね」

「………!!」

「どこかで聞いたことありますね」

「我が家の伝統にしましょうか」

「伝統には!しない!」

「あらそう?ならアイゼンバーグで語り継ぐのね」

「そうします」

「ローズ……なぜそんなに過激なんだ……」

「過激ですか?でも今の状況で浮気なんてされたら、カトリーヌの父親がロクデナシってなるじゃないですか。可哀想だわ」

「そうだけど……!」

「なので、そんな父親はいなかったことにして。去勢はしておかないと、血統が乱れるのは嫌ですもの。でも廃嫡したらどこででも自由に生きられますし、お相手の方と好きなように過ごされては?」

「だから!なぜそんなに切り捨てる方向で潔いのだ?!」

「お義兄様、残念ですが話を聞く限り誰一人として泣いて縋る方はいませんでした。切り捨てるか見せしめにするかの二択です」

「なんと……!」

「出産前は跡継ぎの問題がありましたけど、こうしてカトリーヌもいることですし。レスター公爵家の後継者として立派に育てますから、安心なさってねテオドール様」

「うだぁ!」

「なにひとつ!安心できないぞ?!」

「お義兄様の大音量でも泣かないなんて、カトリーヌ様は大物ですねー」



◇◇◇◇◇◇◇◇


「………」


ルシウス様はついにコメントが出来なくなった。

今度はナッツを口元に運ぶと、それは食べる。

言葉が浮かばないだけらしい。


「……アイゼンバーグの伝統にもしたくないよ……」

「そうですか?すでに二代続けて言われてますけど」

「そうだけど!伝統にしたら、次はシオンの番じゃないか!」

「あ、ホントだ。シオンは廃嫡にしても外には出せないから、別の方法が必要ですね」

「外には出せない……?」

「ヴィンスみたくなるってことです。さすがに命の危機には晒せませんよ」

「……伝統には、しない……」

「そうですね」

それを言ったら、外に出してはいけない筆頭のルシウス様が二代目なんだから、本人に言うだけならあり?

いや、実行できない脅しと言うのも主義に反するし。

要検討かな。


よしよし、と項垂れる夫の頭を長めに撫でると、ようやく決心がついたようだ。



「よし!どんな対応でも受け止めてみせる!……たぶん!ミュー、話してください!」



お膝の上で向かい合わせに座って、真剣な顔でお願いされた。

いや近いよね旦那様。



◇◇◇◇◇◇◇◇


《ミュリエル・フォン・アイゼンバーグ小公爵夫人と夫の場合》


「夫が浮気したら。夫が……ううん、浮気……?」

「ミュー様、どうしたんですか?」

「ううん、シャーリー、夫が、浮気……?」

「なにミュー、そんなに悩むこと?」

「うーん」

「すごい悩んでるわね」

「ミュー様?」


「……夫が、浮気する想像が出来ない」


「「「は?」」」


「いや、自分ならどうするかなーってイメージする前に、まず脳内の夫が全然他の女性に寄り添ってくれなくて」

「あー……なるほど」

「全然って、だって普段女性と話したりするでしょう?その光景を親密に加工したら?」

「ルシウス様、女性と話さない」

「「は?」」

「うちのメイドたちとも滅多に話さない。ほぼ男性を通じて連絡、例外は私の侍女たちとお義母様の侍女くらい?それも直接話す用事ってそんなにないし」

「え、いや仕事は?」

「話さない」

「「はぁ?」」

「あの……、本当なんです。ミュー様の旦那様は、女性の使用人から話し掛けることを制限されてて……。私もアサト様かミュー様がいるところでしか話したことなくて」

「え……そんなことある?だってあのアイゼンバーグ卿でしょう?」

「「あるのです。」」

「ええ……」


「想像できない以上仕方ない。私の意見はこれです!すなわち!『その浮気した男性は、私の夫ではありません』以上!」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「〜〜〜〜〜っ!ミュー!!」



感極まったルシウス様に、力の限り抱き締められた。

ギブギブ!とバンバン背中を叩くと、今度は喰らいつかんばかりのキスになる。


まぁね……予想はしてたんだよ。大喜びするだろうなって。

だから日程を考えて、翌日に支障のないような夜に話をしたんだ……。


嵐のような求愛行動の中、辛うじて言えたのが「ここでは無理」だったので、嬉々として寝室に運び込まれる。

その後は……ご想像の通りです。

危うく、一児の父なのに閨の教育的再指導が始まるところだった……。



後日。話を聞いた皆さんの意見をダイジェストにして一覧化し、こんな感じですよ〜と配り回った。

女性陣は色んな意見に「ほうほう」と感心し、男性陣はこぞって「ルシウスの一人勝ちか……!」と項垂れたそうだ。


当のルシウス様は、一覧を見ては最後の私の箇所で嬉しそうに笑うことを繰り返してる。

それはいいけど、一番上も読みなさいよね?

「ルシウス→泣いて縋る」ってあるから。

皆「そうだろうね」って納得してるから。

お気に入り膝枕の体勢で寝っ転がる旦那様を見て、今日も幸せそうねーと頭を撫でておいた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「エリーゼ、またミュリエル夫人の手紙を読み返してるのか?最近ずっと読んでるな」

「ふふ、そうなんです。皆様色んな意見があって面白くって、つい読み返してしまうの」

「意見?」

「レイモンド様も読みます?」

「いいのか?手紙だろう?」

「こちらはダイジェストですから」

「ダイジェスト?…………これは」

「『あなたの夫または婚約者が浮気をしたらどうしますか?』って聞いて回ったんですって」

「ミュリエル夫人は一体何を……?」

「手紙には『興味本位』とありましたね」

「興味本位で王妃陛下にまで?!」

「それは『話の流れで』とありました」

「……まず、一番上になぜルシウスが?」

「『一番女々しいのを最初に載せました』だそうです」

「めめ……まぁ、泣いて縋るだからな……」

「ルシウス様に縋られたら、振り払える人なんていなくないですか?」

「ほとんどはそうだろうが、ミュリエル夫人はどうだろうな……」

「あぁ……出来るかもしれないですね……」

「一番縋りたい相手だろうに……」

「まあでも、お二人は仲良しですから心配いらないと思いますけど。一番下までご覧になりました?」

「ちょっと待て、読み込んでる。……王族は皆様割り切ってらっしゃるな……。……アイゼンバーグ家の侍女はどれだけ恨みが深いのか……。叔母上はソフィア様に報告か。これが一番重いかもしれないな」

「アイゼンバーグ公爵様のお体が心配になりますよね」

「そうだな、再起不能にだけはしないでやってほしいが。……ローザリアのこれは、どこかで聞いたことあるな。どこだろう?」

「離縁して去勢して廃嫡、ですか?確かソフィア様の名言集に同じ言葉が載っていたかと」

「あぁそうか。ソフィア様なら言い兼ねないが。……最後のミュリエル夫人は、惚気でも書いたのか?『夫が浮気をする姿が想像出来なかったので、どうも出来ない』とは」

「ふふ、ミュー様とルシウス様は本当に仲睦まじいですね」

「そうだな。……コホン、あー、エリーゼ……は、どうするのだ?」

「え?」

「その、この質問だ」

「レイモンド様が浮気をしたら、ですか?」

「あぁ」

「王都に帰って就職します!目指すは侍女なんですけど、アイゼンバーグ家とレスター家のどちらにしようか迷ってて。アイゼンバーグ家のサロンも素敵ですが、ローズ様ご自慢の庭園も捨て難いです」

「エリーゼは、まったく迷い無く俺を切り捨てるのだな?!」



※安全のため、飲酒後丸一日授乳はしておりません。

と言うか起き上がれなかった。予想通り。

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― 新着の感想 ―
『その浮気した男性は、私の夫ではありません』 名言が生まれたw
惚気というか、使用人ですら女性と話さず、会っているときはほぼくっついている人の浮気を想像できないのでは? 正直本作を読んでいて、他の男性人は仮定で想像はできるけど、ルシウスについては想像できませんでし…
あー、えーっとー、ご馳走様です! やっぱすぐ第二子くるんじゃないかなコレ(笑) エリーゼも容赦ない感じで育っていて素晴らしい(拍手)
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