↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テンプレートが立ちはだかる日常  作者: ひつじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
100/104

王家の宴本番:大嵐を王家にぶつけた

日常100話目です。

長くなりましたがまだまだ続いております。

引き続きよろしくお願いしますm(_ _)m

広間は騒然となった。

グラスを落とした人達の後始末、お酒が掛かったご婦人の染み抜き、倒れた人達の介護……。

我々は入場しただけなんだけどな!

とりあえず玉座の一番近くに陣取って、乾杯が始まるまで待機だ。

「ぷあ、れ!れ!」

「んー?あぁ、シャンデリアがキラキラしてるね」

「きりゃ!」

「綺麗だね」

うふふ、とシオンがご機嫌なので、ルシウス様も笑う。

目撃した辺りから二次災害起きてんだけど。

今日のシオンはルシウス様と同じように髪を固めて額を出し、いつもよりも一層男の子らしくなってる。

それにお気に入りの紫のリボンタイをしているので、「お父様みたいね〜」と褒められるのを待ってる感じだ。

……いやホント、こちとら赤ん坊と妊婦の集団なんだから、早くしてくれ。

騒ぎの原因ではあるが、勝手に騒いでるという見方もあるので、そこは知らん!


◇◇◇◇◇◇◇◇


どうにかこうにか乾杯の音頭が取られた。

シオンは赤ちゃん用のマグで。

「かんぱ〜い」と声を掛けてグラスと合わせてみたら、思いの外喜び「ぷあ!かんぴゃ!」とノリノリになる。

「シオン、溢れるからそっとやるのよ」

「はいシオン、乾杯」

「かんぴゃ!」

ちょん、と合わせるだけで大喜びだ。

「びー!かんぴゃ!」

「んー?気に入ったのか。ほれ、乾杯」

「しゃり!かんぴゃ!」

「光栄ですシオン様」

「はり、かんぴゃ!」

「シオン様……なんと恐れ多い」

義父母にもうちの両親にも声を掛けてる。

切りがないのでマグを口に付けたら、ゴクゴクと飲み始めた。

「「かわっ……」」

呟きが重なって聞こえる。

横目で見るに、王家もやりたそうな顔してんな。

「ミュー、果実水が苺だね」

「接待の一環かしら?」

「ふふ、ミューは大物だね」

こちらも静かに乾杯した。


子どもがいるという事で、王家への挨拶も一番にしてもらえた。

お義父様とお義母様が先頭に立ち、祝いの言葉を述べる。

「本日は誠におめでとうございます。アイゼンバーグ家・グリフィス家一同、王家の永らくの繁栄を、心よりお祈り申し上げます」

お義父様の挨拶に合わせ、全員で頭を下げた。

王族も勢揃いし、ヒムロまで並んでる。

「うむ、忠誠に感謝する。公爵、伯爵」

陛下が厳かに頷いたところで、うちの天使がご挨拶した。


「ごち、よぅ!じっじ!」

「シオ……う、む、元気がいいな、アイゼンバーグ家の跡継ぎは……」


陛下、腰浮いたんだけど。条件反射で抱き上げようとしたな?

他の王族もそわそわしてるし。

陛下のいつもと違う対応に、シオンの顔が少し曇った。

それを見てさらにそわそわになる王族たち。

こりゃいかん。

「シオンくんー、ほら、あちらでお父様とお菓子食べる人〜?」

「たい!」

困った時の仕込み。

意識を大好きなお父様に向けたので、すぐに笑顔になるシオン、ちょろい。

そのまま我々は後ろに下がり、グリフィス家へと譲る。

父上は悲愴な顔で陛下に告げた。


「陛下……本日のお祝いに、我が息子もお目通り叶いたく。御前に参上してもよろしいでしょうか」

「グリフィス伯爵の?……例の子息だな」


陛下も顔を強張らせる。

うん、さっきの騒ぎぐらいじゃ、玉座からは顔までは見えなかったかな?

同じく顔を強張らせるのがマリーとユーリ様。覚悟を決めた顔がヴィンセント様。他の王族はわからんらしい。

「よろしいですか皆様方。気をしっかりお持ちになってください。臆したらそこで終わりでございます。とにかく、自分を見失わないように!」

父上の注意事項が続く。息子を紹介する父親とは思えない内容だな。

「父上ひどくないか?サリー」

ヴィンスも思ったらしく、寄り添うサリーに囁く。

「大変適正な評価です」

「嫁の方がひどかった」

「ミュリエル様ほどではありません」

「ちょっと!なんでこっちに飛び火すんの?」

後ろから抗議すると、陛下の前に立った父上がジト目で振り返っていた。え、私か?

「本当にお前達は、少しの間くらい大人しくしてられないのか。……まあいい、気が抜けた。ヴィンス、サリー、来なさい」

お前達、って!まとめられた!

ぐぬぬ、と唸ってるとルシウス様がお腹を撫で、シオンが「たしゃ?だじょぶ?」と労ってきた。

仕方ない、天使たちに慰められたら機嫌を直すしかない。



「陛下、息子のヴィンスとその妻のサリーです」

「お初にお目に掛かります。ヴィンス・グリフィスと申します。長らくトラキオンヘ留学しておりましたが、子の出産を機に戻って参りました。よろしくお願いいたします」

「サリー・グリフィスと申します。よろしくお願いいたします」



二人して頭を下げーー顔を上げた時、ヴィンスは最大限のにこやかさで微笑んだ。

おい、威力を強めるなとあれほど……。


「「「「「〜〜〜〜〜?!」」」」」


ほら、皆様絶句してるじゃないの。

あ、ヒムロだけ普通に驚いてる。たぶん、ヴィンスが私と同じ顔してるからだ。あの子も魅了耐性があるらしい。

マリーは傍らのユーリ様の背中を笑顔で抓ったらしい。おかげで涙目ながら、ユーリ様は我に返った。

「ヴィ、ヴィンス殿、久しぶりだな……」

「これは第二王子殿下。お久しぶりにございます。この度は誠におめでとうございます」

そう言って、先程とは違う親しみの篭った笑みを浮かべた。

ユーリ様はまた赤面してしまう。おい。

「ヴィンス、久しぶりね。あなたに妻がいたなんて知らなかったわ」

貴族スマイルを貼り付けたまま、今度はマリーが話し掛ける。

「あぁ、先日籍を入れたばかりだ。子どもはお前の息子と同級生だな。どうぞよろしく」

一転、くだけた口調でマリーと話すヴィンスに、王族方はもはや対応不可になってる様子。

これはもう、撤収した方が良いだろう。


「ヴィンス、シオンがお菓子を食べたがってるのよ」

後ろから囁くと、サリーも一緒に振り返った。

「シオンのおやつか、それは食べさせなければな。やはり苺がいいのか?」

「ヴィンス様、シオン様は葡萄もお好きです」

「葡萄か!きっと食べてる姿も可愛いぞ、よし行こう」


さっさと下がりそうになるので、父上が慌てて止める。

「マイペースなのもいい加減にしなさい!……失礼しました。これにて下がらせていただきます、お時間をいただきありがとうございました」

父上の言葉に合わせて頭を下げ、両家揃って玉座の前から去る。

王族はしばらく呆然としていた。


◇◇◇◇◇◇◇


「威力をあげるな、ってあれだけ言ったのに。全然従わなかったわね、馬鹿ヴィンス」

「まあそう怒るな。この国の王族に、どこまで効くのか知りたかったんだよ。第三王子殿下だけは耐性をお持ちのようだな」

「そういうもんなんだね、やっぱり不思議」


ルシウス様がシオンを膝に置き、ヴィンスがシオンの口に菓子を放り込む。

サリーは私の隣に座り、世話をしたがるのをなんとか抑えてるようだ。

妊婦と幼児のためにしつらえた、軽食スペース。

社交のある親達は散ったので、子どもたちだけで居座ってる。もちろん、周りは騎士達に固められてる。

「ん、シオン。さっき口に入れた葡萄、もしかしてこっちの頬に入ってるのか?」

「あぁ〜、シオン、お口の中ごっくんしてからヴィンス殿にもらうんだよ。ほらモグモグして」

「うみゅ」

「はは、頬袋に溜め込んでるのか?リスみたいだな」

「ほっぺが丸いから、気付かないことがあるんだけどね。気に入った物をこちらの頬に溜める癖が」

美麗な親子と美麗な伯父が戯れてる風景。

騎士達が後ろを向いたまま震えてるのは、気のせいか?

目を細めて見守るハリーに、騎士の一人が近付き耳打ち。

それをこちらまで伝えに来る。

「ミュリエル様のご友人方が、ご夫君と共にいらしてるそうです」

「あら。挨拶しに来たのかしら、ヴィンス、入れてもいい?」

「ん?あぁ、ミューの友達か。いいけど、俺は責任を持たないぞ?」

魅了に落ちる可能性か。それは仕方ないかな。

ハリーに許可を出すと、ぞろぞろと人がやってきた。


「「「ミュリエル様、皆様方、ご機嫌よう」」」

「ごち、よぅ!」


三人娘の揃った挨拶に、シオンが真っ先に反応する。

「シオン様……先日もお可愛らしかったですけど、今日はまた格別です!」

「ホント、物理的に眩しかったわ。私の父はグラスを落としたわよ」

「うちの母はふらついたわね……、それで、こちらがミューのお兄様?」

トレイシーの質問に、ヴィンスは立ち上がってニコリと笑い掛けた。


「初めまして、ヴィンス・グリフィスです。妹と甥がいつもお世話になっています。今後共よろしくお願いします」


ヴィンスにしては控えめな笑み。

それでも三人とも赤面してるし、魅了耐性は低いかも。

後ろの夫達は面白くなさそうな顔だ。

「……以前お会いしましたね、ミュリエル様のお兄様。アサト・ワルローと申します。アイゼンバーグ卿にも、日頃からお世話になっております」

赤くなったシャーリーを引き寄せ、アサトがヴィンスに果敢に挑む。

ヴィンスはーー大変、面白そうな顔になった。

「あぁ、ルシウスの後輩か。あの時は世話になったな!ミューのお友達の夫だったのか」

「ええ、私も同窓生ですので」

「へぇ!俺も学園に通えていたら、君らと一緒に過ごせたのにな。まあ良いか、どうぞよろしく」

「……はい」

アサトに近付き、にこやかに握手を求めるヴィンスに、アサトも応じる。

ルシウス様が、やれやれと言う顔をした。

「だいぶ俺を警戒しているようだがな、ミューのお友達を誘惑する気はないぞ?そこまで節操なしじゃないさ」

「……!はい、失礼しました」

「でもな、友達の旦那までは知らない」

「は?」

ヴィンスがニコリと笑って、アサトに顔を近付けた。


「自身でも俺をきちんと警戒しておくといいよ、アサト」


最後の名前のところだけ、必要以上に艷やかな声でそう囁いた。ついでに流し目も。

「〜〜〜〜〜?!」

咄嗟に手を振り払ったアサトは、真っ赤になって耳を抑える。

ヴィンスはカラカラと笑い、シオンの隣へ戻った。

「いやぁ新鮮な反応だな。とても楽しい!」

「楽しまないでくれる?アレも一応友達なんだけど」

「あれ、そうなのか。しまった、お友達を誘惑してしまったな。これじゃ節操なしと思われるぞ。アサト、今のなしで」

「〜〜〜〜!」

「あ、アサト様?大丈夫ですか?」

「だじょぶ〜?」

「シオンは気にしなくていいからね。ワルロー、誰にでも突っ掛っていくからこんなことになるんだよ。私の義兄に失礼な振る舞いをしないでくれ」

「〜〜!失礼、しました」

「おぉ、ルシウスが強気だ!見たかミュー」

「割と見るわよ?人によるの」

「へぇ〜〜」

「……まじまじと見るのはやめてほしいな」

ルシウス様も少し赤くなってるけど、これは照れだな。

やり取りに毒気を抜かれたのか、友人達も笑顔になってきた。


「ミューと同じ顔してるのに色男なんて、凄いわ!」

「サラ、微妙に引っ掛かるんだけどどういう意味?」

快活に言われたが解せない。

「色気と言うのは、顔だけじゃないのね」

「だからトレイシー、どういう意味??」

こっちも、しみじみ言うな。

「ミュー様は、どちらかと言うと可愛らしいので!その!だから!」

あわあわ言われるのもなんだか悲しい。

「……シャーリー、気持ちだけ受け取っておくわ」

「ミューは可愛いよ?」

「たしゃ、かーい!」

「君らの褒めは家でやって!際限ないから!」

混じってくるな、美麗親子!

「良かったなぁミュー、可愛いって言ってくれる奴がいて」

もっと混じるな馬鹿兄!

「あんたに言われると無性に腹が立つんだけど?!」

「たしゃー、めんちゃ〜」

シオンの謝罪に、一気に気が抜けた。

「…………シオン、ホントにその癖やめよう?」

「めんちゃ?」

ヴィンスがルシウス様に聞く。

「ミューが怒ると、無条件にシオンが謝罪するんだ」

「……俺が悪かったよシオン、ミュー」

珍しく素直に謝ってた。


一方、サリーとハリーを見比べたサンレイク様は、ハリーに何かを感じ取ったらしい。

「手合わせを!ぜひ!貴殿は強いだろう?」

「お断りします」

「そこをなんとか!どうしたら引き受ける?!」

「主の許可が下りなければお答え出来ません」

「あるじ?」

ハリーは無言でヴィンスを指差した。

「ヴィンス殿!貴殿の従者殿と、手合わせをさせていただきたい!」

「うお、びっくりした。手合わせ?」

詰め寄るサンレイク様に、ヴィンスが引く。

ヴィンスに詰め寄れるなんて、耐性高そう。

「サンレイク、何を興奮してるの?」

「サラ!この方強いぞ!」

サンレイク様が示すハリーを見て、サラは目を丸くした。

「あら、サリーと同じ顔。こちらも双子?」

「いえ、年子です」

「へー。でもサリーと兄妹なら、強くても当然ね」

なぜサリーの強さを知ってるかと言うと、色々やったからだね。

「だろう?ヴィンス殿、ぜひ!」

食い下がるサンレイク様に、ヴィンスは何かを考えてるようだった。


「んー、ならせっかくだから、皆集めてトーナメント制で競わせよう」


ヴィンスが何か言い出した。

ルシウス様が怪訝そうな顔をする。

「ヴィンス殿、何を?」

「シードにマシュルト入れて、セザールもだったか?アイゼンバーグとグリフィスの騎士と、あとは希望者だな。こちらの旦那さんはどこの所属だ?」

「王宮近衛騎士です!」

「はは、近衛騎士か。不足はないな。マリーに言って許可を取らせよう」

「マリー?王子殿下方ではなくて?」

なんで選りにも選って、ヴィンスを毛嫌いしてる従姉妹にやらせるんだ。

ヴィンスは肩を竦める。

「殿下方が許可を出したりしたら、俺の魅了が疑われるだろう?変に勘繰られるのもゴメンだし、マリーが納得して許可を出したなら公明正大だ」

「なるほど」

「ヴィンス様、父が出るなら私は辞退しても?」

「そんな!」

「父の方が強いので」

「そうなのか?!」

ハリーの言葉に、サンレイク様の目が輝く。

「辞退してもいいけどなハリー。上位入賞者には、それ相応の褒美をやるぞ?」

「褒美?でしょうか?」

「お前ならさしずめ、シオンを膝に乗せて給餌する権利とか「やります」」

おい。

間髪入れずに受けたハリーにも、勝手にうちの子を賞品にしたヴィンスにも物言いだ。


「うちのシオン様を勝手に賞品にしないでください〜」

「膝に乗せるだけだぞ?それでやる気が出るんだ、協力してやれよ」

「ルシウス様!なんとか言って!」

「膝に乗せるだけならいいと思うけど」

「それ、シオンじゃなくて私が賞品になっても言えます?」

「絶対駄目!駄目だよヴィンス殿!」

「落ち着けよルシウス、ミューにやらせる訳ないだろう?」


結局、父親の強固な反対に遭い、シオンを膝に乗せる賞品案は没になった。

ただ、ハリーのやる気を引き出すために、「シオンを一日コーディネートする権利」は提供することにした。

サンレイク様は賞品がなくとも喜んで参加するので、そこはサラの希望を叶えるらしい。

あっという間に『グリフィス家主催:最強騎士を決めるトーナメント ※褒賞は要相談』の開催が決まってしまった。


王家の宴で、何をやってんだかなぁ……。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
王家の宴で何をやってんのよ、は読者総ツッコミなんだが。 作者様、そろそろシオンにもヴィンスにもミューにもルシウスにも淡々と話を強制的に進める(執行する)「有能な」王家の宰相か執事かメイドか侍女を用意…
百話目も最高です!社交そっちのけで、最強騎士決定トーナメントの開催が決まってしまった……!王家の宴って何だっけ? 優秀じゃなくても、上位に入れば報酬が?ヴィンスなら何でも叶えてくれそう! 楽しげな予定…
100話おめでとうございます(´▽`) かんぴゃ! 読み返しては笑って楽しんでおります。 まだまだ続きそうで嬉しい~! 噂の性女と元王女がまだスタンバってると思うとわくわく。 鉄壁の騎士の囲いの外で…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。