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章ラストカット
風削崖の上。
夜と朝のあいだの色が、空に薄く残っている。
乾いた空気は透明で、
遠くまで見える。
裂土はひび割れたまま広がり、
直線の影が静かに横たわる。
その向こう。
地平線に、白い帯がある。
最初は雲のように見える。
だが違う。
低い。
地面に沿って、細く、
ゆっくりと伸びている。
湿度の境界。
かすかに、動いている。
甘い霧が、裂土の端に触れている。
触れた場所だけ、
輪郭がわずかに鈍る。
だが溶けはしない。
崩れもしない。
ただ、接している。
ケインは崖の縁に立つ。
手の中には、名のない形。
割れを残したまま整えられたそれは、
冷たく、重い。
リオは少し後ろにいる。
何も言わない。
風は強い。
だが白い帯は消えない。
乾燥は絶対ではない。
湿度もまた、永遠ではない。
境界は固定されていない。
ナレーション:
乾燥は安定ではない。
湿度は侵略ではない。
形は、条件の上にしか立てない。
白い霧は、ほんのわずかに進む。
裂土は、ほんのわずかに受け止める。
どちらも、完全ではない。
ケインは名のない形を握り直す。
角は残り、
曲線も残る。
そのどちらも、まだ消えていない。
最後の一行:
割れ目は、まだ閉じていない。




