表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
年輪はまだ柔らかい  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/90

第四幕|実験

夕方の光は白い。


影が鋭い。


広場の中央に、ケインは立つ。


懐から、円環を取り出す。


艶はまだ残っている。

城の湿度を記憶している表面。


彼はそれを、地面に置く。


静かに。


円は、一瞬だけ自分の形を主張する。


だが、転がらない。


亀裂に触れている。


縁が、ひびの角に引っかかる。


わずかに押す。


ころ、と動きかける。


次の瞬間。


ぱきり。


欠ける。


音は乾いている。


湿りを含まない、短い破断音。


円の一部が砕け、粉になる。


甘い匂いは、立たない。


風が即座に持ち去る。


残らない。


リオが言う。


「ここでは、丸いものは長くもたない」


説明。


警告ではない。


ケインは否定しない。


欠けた縁を指でなぞる。


そこに初めて、角が生まれている。


円の内部に、直線が侵入している。


シーン6:甘さの無効化


ケインは、小さな砂糖片を取り出す。


浅い皿に水がある。


透明で、揺れない。


砂糖を落とす。


ぽつり、と沈む。


待つ。


溶けない。


表面が崩れるだけで、

水に広がらない。


混ぜても、拡散しない。


甘さが均一にならない。


水は甘くならない。


舌に含んでも、

粒が残る。


まとまらない甘さ。


孤立した甘さ。


ケインは理解する。


甘さは絶対ではなかった。


湿度と温度と保持力。


条件が揃って、初めて拡散する。


ここでは成立しない。


甘さは、環境依存だった。


裂土では、効かない。


風が吹く。


皿の水面がわずかに揺れる。


だが、円は戻らない。


甘さは広がらない。


整いは、発生しない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ