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第二幕|裂土の視覚
霧が完全に途切れたところで、地面の様子が変わった。
色が抜けている。
灰白色。
生命の痕跡はあるのに、艶がない。
地面は深く割れている。
表面だけではない。
指が入るほどの亀裂が、幾重にも走っている。
だが、それは円を描かない。
放射状でもなく、同心でもない。
中心を持たない線。
不規則な線の集合。
偶然のようでいて、
どこか意志的に円を拒んでいる形。
ケインは膝をつく。
ズボンの布が、乾いた音を立てる。
手を伸ばし、地面に触れる。
土は粉状だった。
握ると、すぐ崩れる。
まとまらない。
指を開いても、艶が残らない。
湿りも、粘りもない。
彼は試しに、懐から小さな円片を取り出す。
甘い匂いが、わずかに立つ。
それを地面に押しつける。
付着しない。
甘さが移らない。
土は受け取らない。
匂いも広がらない。
風が吹き、粉が舞う。
円は孤立したまま、地面の上にある。
ナレーションが落ちる。
ここでは、整わない。




