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第六章「乾燥地帯の発見」第一幕|霧の終端
甘い霧は、ゆっくりと薄くなっていった。
足元の石畳に濃度が落ち、歩くたびに音が鋭く響く。
靴底が高い音を立て、乾いた空気に反射する。
ケインは息を吸った。
肺が軽くなる。
湿った城の中とは違う。
胸の奥が、静かに落ち着く。
そして気づく。
匂いが、残らない。
振り返れば、城門の向こうに残った白い霧だけが、かすかに漂う。
そこに甘さは濃いままだ。
だが前方は、灰色。
空気は乾き、光は薄く揺れる。
風が霧を流す。
匂いも、霧とともに運ばれていく。
歩みを進めるたびに、背後と前方の差が広がる。
甘さは後ろに置き去り。
前にあるのは、未知の乾燥。
ケインは、ただ一歩、また一歩と踏み出す。
湿度の断層の中で、直線だけがはっきりと存在している。




