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年輪はまだ柔らかい  作者: 南蛇井


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②レティシアの転動

最初に現れたのは、影だった。


丸い影。


霧の向こうから、転がってくる。


ゆっくりと、しかし迷いなく。


レティシアは「完璧な円」のまま登場する。


直径二十四センチ。


誰かが測ったわけではない。

だが、その具体性が場を静める。


二十四センチ。


抱えられる。

棚に置ける。

規格に収まる。


風が吹く。


彼女は転がる。


完全な円は、立っていられない。


止まるには、誰かの手か、壁か、凹みがいる。


ここにはない。


城門の石畳は、わずかに傾いている。

だから、彼女は自然にケインの方へ向かう。


ころ、と音がする。


乾いた音ではない。

内側に何かを含んだような、やわらかな反響。


ケインの足元をかすめ、

少し先で、また風に押される。


転がりながら、彼女は言う。


「……責任、取りなさいよ」


声は軽い。


恨みではない。


怒気もない。


ただ、確認。


変えた側の義務。


丸くなったこと。

整ったこと。

転がり続けること。


それらの出発点に、彼がいたという事実。


ころころ、と回転は止まらない。


目も口もないはずなのに、

視線だけがこちらを向いているような気がする。


完全な円は、否定もしない。

肯定もしない。


ただ、変化の結果として存在している。


風がまた吹く。


彼女は少し傾きを変え、

門の内と外、その境界線をなぞるように転がった。


止まらない。


止まれない。


誰かが、拾わない限り。

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