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⑦ケインの違和感
ケインだけが変わらない。
報告書の数字が整い、
円が三つ静止し、
甘い匂いが自然に混じっても。
彼の輪郭は直線のままだ。
だが今回は、質が違う。
乾きは異物ではなくなりつつある。
代わりに、孤立へと近づいている。
世界が丸くなるほど、
直線は浮き上がる。
均一な床に落ちる影のように、
彼の線はくっきりと見える。
誰も責めない。
誰も勧めない。
ただ、合わない。
彼の呼吸だけが、
甘さと歩調を合わせない。
彼は森へ行くかもしれない。
丸い実を手に取り、
その空洞を確かめるかもしれない。
川を覗くかもしれない。
流れる年輪を、
指先で止めようとするかもしれない。
だが、何もしない。
動けば物語になる。
動かなければ、観測者でいられる。
ここでは動かさない。
彼は城の窓辺に立つ。
遠くの畑は、風に揺れている。
上空から見れば、円を描いているのかもしれない。
甘い匂いは、もはや背景だ。
乾きは残る。
だがそれは、抵抗ではない。
まだ名付けられていない状態のまま、
直線は立ち続けている。




