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年輪はまだ柔らかい  作者: 南蛇井


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⑥城へのフィードバック

玉座の間に、報告が積まれていく。


紙の擦れる音だけが、静かに響く。


「作物の保存性が向上」


書記官が読み上げる。

数字は右肩上がり。

腐敗率は下がり、損失は減少。


「乳児死亡率が低下」


医務局からの報告。

統計は安定し、

曲線はなだらかに改善を示す。


「治安が安定」


争いは減り、

衝突は少なく、

市井は穏やかだという。


どの報告も、良い知らせだ。


反論の余地はない。


レティシアは、完璧な円のまま沈黙している。


外周は揺れない。

空洞は均衡を保っている。


肯定も否定もない。


ただ、在る。


ヒロインは立っている。


頬の艶は均一で、

指先は丸い。


だが微笑まない。


喜びを示す必要がないからだ。


結果はすでに整っている。


ケインだけが、窓の外を見る。


遠くの森。

川の反射。

市場へ向かう馬車。


彼の背は直線のまま。


甘い匂いは、城内と城外の区別を失いつつある。


それはもう特別な香りではない。


土と混じり、

麦と混じり、

人の息と混じる。


自然の匂いになりつつある。


報告は終わる。


紙は重ねられる。


改善は確認される。


誰も異を唱えない。


城は静かだ。


そして世界もまた、静かに整っていく。

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