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年輪はまだ柔らかい  作者: 南蛇井


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27/90

③経済と倫理の転換

市場の軒先に、丸い作物が整然と並ぶ。


大きさは揃い、艶は均一。

重ねても崩れず、転がしても遠くへ行かない。


商人が掌で転がし、うなずく。


「扱いやすい」


それは賞賛ではない。

実務の判断だ。


角がない。

傷がつきにくい。

積み上げても隙間が少ない。


箱詰めがしやすい。


寸法を決めれば、すべてが収まる。

緩衝材は薄くて済む。

蓋は軽く閉じる。


輸送効率が良い。


馬車の揺れに耐え、

湿気をはね、

遠い町まで形を保つ。


第二章で囁かれた“箱”は、

いまや町の標準になっている。


木工職人は同じ内寸を刻み、

商人は同じ規格で値を付ける。


世界は静かに、規格化へ進む。


丸さは利便。

均一さは信用。

空洞は軽量化。


倫理的疑問は出ない。


腐らない。

甘い。

保存可能。


すべて利点だから。


誰も損をしない。

むしろ、余る。


市場は回る。

箱は積まれる。

甘さは広がる。


整っていくことに、

異議を挟む理由は、まだ見当たらない。

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