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年輪はまだ柔らかい  作者: 南蛇井


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②自然界への波及

風は、城壁を越える。


甘い香りは石を越え、堀を越え、

畑へ、街道へ、森へと広がっていく。


それは強くない。

鼻を刺さない。


ただ、どこかで嗅いだことのある匂い。


旅人が足を止める。


「……懐かしい匂いだな」


振り返りはしない。

原因も探らない。


懐かしさは、疑われにくい。


風はそのまま進む。


川は静かに流れている。


水面に、輪が浮かぶ。


最初は波紋に見える。

だが消えない。


年輪のような模様が、

ゆっくりと流れていく。


木の切り株ではない。

倒木もない。


ただ、円がある。


光を受けて、艶を持ち、

均一な層を描きながら下流へ向かう。


子どもが石を投げる。


水しぶきが上がる。


円は崩れない。


誰も騒がない。


川はいつも何かを運ぶ。


それが輪であっても、

水は変わらず流れる。


森では、木の実が実る。


例年よりも、やけに丸い。


角がない。


表面はしっとりとしている。


乾燥しない。

ひび割れない。


指で押せば、やわらかく戻る。


中央に、わずかな空洞。


種は薄く、均整が取れている。


農民が籠を抱えて立つ。


重みを確かめ、

一つかじる。


「今年は豊作だ」


完全に正しい。


甘い。


保存が効く。


腐りにくい。


市場まで運んでも崩れない。


箱に詰めやすい。


被害はない。


むしろ恩恵だ。


森は静かに丸くなり、

川は静かに輪を運び、

風は甘さを混ぜる。


世界は騒がない。


正しい結果が、そこにあるからだ。

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