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年輪はまだ柔らかい  作者: 南蛇井


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第四章 世界は静かに増える ①終了していないという事実

問題は、終わらなかったことだ。


城の中では完成していた。


王子の円。

ヒロインのしっとり。

レティシアの完璧な円。


そして中央に立つ、乾いた直線。


円は三つ。

直線は一本。


構図は静止している。


甘い匂いは均一で、

層は崩れず、

空洞は正確だった。


誰も騒がない。


誰も泣かない。


問題は解決したように見える。


だが物語は閉じていない。


甘い匂いは壁に留まらなかった。


高窓の隙間から、

わずかな風が入り込む。


カーテンが揺れる。


香りは、そこで初めて動く。


城壁を越える。


塔をすり抜ける。


風に乗る。


それは重たいはずの匂いだった。

だが外気に触れると、軽い。


春の匂いに混じり、

土の湿りに溶け、

誰の鼻にも違和感なく届く。


街道を行く旅人が、ふと立ち止まる。


「甘いな」


それだけ言って、歩き出す。


城の中の完成は、

城の外では始まりにすぎない。


円は静止している。


だが匂いは動く。


構図は閉じている。


だが風は閉じない。


問題は、終わらなかったことだ。


世界はまだ、広い。

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