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年輪はまだ柔らかい  作者: 南蛇井


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⑦ケインの位置づけ

円が三つ、静かに在る。


王子。

ヒロイン。

そして、完璧なレティシア。


甘い匂いは濃く、均一で、

広間の天井にまでやわらかく溜まっている。


その中心に、ケインは立っている。


湿らない。


指先は艶を持たず、

呼吸は香りを抱き込まない。


円にもならない。


肩は閉じず、

背は湾曲せず、

中心に穴を抱えない。


ただ立っている。


城の中央で、

唯一、直線のまま。


彼の影は細く、

床の模様を横切って伸びる。


曲がらない。


甘い匂いの中で、

彼だけが匂いを変えない。


吸わない。


混ざらない。


拒んでいるようにも見える。


だが、拒絶の動きはない。


剣を抜くこともなく、

声を荒げることもなく、

ただ観察している。


彼の乾きは抵抗か。


均質化への、最後の異物か。


それとも触媒か。


甘さを測り、

完成度を引き上げ、

より完璧な円を生むための装置か。


レティシアは美しい。


王子よりも整い、

誰よりも誤差が少ない。


それを生んだのは、

湿りではなく、乾きだった。


ケインは動かない。


円は静止している。


甘い匂いは満ちている。


答えは出ない。


出さない。


直線はまだ、

ここにある。

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