②対峙 ― 原因の指摘
甘い匂いの中心に、レティシアは立っている。
完璧な円は玉座に寄り添い、
しっとりしたヒロインはその少し後ろで呼吸を整えている。
侍女たちの囁きは、箱の寸法の話題へ移っていた。
そのすべてを横切るように、
乾いた靴音がひとつ、響く。
硬い。
吸われない。
ケインが歩み出る。
彼は止まる。
円と円のあいだ。
真正面から、レティシアを見る。
この物語で初めて、疑いが形を持つ。
彼の視線は逸れない。
甘さに曇らない。
そして言う。
「……原因はお前だな」
怒鳴らない。
低く、静かに。
断定だけがそこにある。
広間はわずかに静まる。
侍女の手が止まり、
大臣の指が書類の端で止まる。
レティシアは否定しない。
「違います」とも言わない。
弁明も、笑いもない。
ただ穏やかだ。
完璧な円の輪郭を保ったまま、
彼女はケインを見る。
責められた者の目ではない。
観察する者の目でもない。
静かな提案の目だ。
そして、柔らかく言う。
「あなたも、丸くなればいいのに」
声は低い。
温度は適切。
忠告のようでいて、
慰めのようでいて、
どこか勧誘に近い。
丸くなれば。
角は取れる。
摩擦は減る。
空気に馴染む。
中心は空く。
ケインは瞬きをしない。
甘い匂いの中で、
彼だけが乾いたまま立っている。
円と直線が、
はじめて向き合った。




