ブラックハッカー
あたしがお嬢様サイエンスクラブの部室に行くと、岸が、あたしの右隣の席に座っていた。岸は部室の入り口にいるあたしを、じっと見て不思議そうな顔をした。
……不思議な気分になるのは、あたしのほうだ。
シュウちゃんが走ってきて、あたしの腕をつかんだ。そしてあたしはシュウちゃんに部室の外へ連れていかれた。
「岸は乙女の言うことなら聞くのね」
「そんなことないよ」
「そんなことあるって。部活に続けて出るように言ってみてよ」
「岸」
「おう」
「そのパソコン、持って帰ったらダメだから」
「そうなんや」
「生徒会の人も使うんだからね。だから、ちゃんと毎日、部活に来てよ」
「乙女は……」
「え、何?」
「いや、なんでもないわ。ちゃんと部活に出るわ。就職に響くらしいし」
「それなら授業中に寝るの、やめなさいよ」
「いや~、乙女の後ろやと、よう眠れるねん」
シュウちゃんが、からかうように、あたしたちを見ていた。
それから岸は部活に来るようになった。岸は「このパソコン、ちいちょうて使いにくいわー」と言いながら、何かのプログラムを打ち込んでいた。
「それ、何のプログラム?」
と、あたしが聞くと
「ゲームやで。簡単なやつ」
と岸は答えた。前にいた学校で習ったものらしい。
そして岸は、シュウちゃんの活動に関心があるらしく、ときどきシュウちゃんの本やパソコンをのぞいて
「さすがやなー」
と言っていた。
その日も岸は、シュウちゃんのパソコンをのぞきこんでいた。
シュウちゃんは言った。
「気になる? 学年2位の岸くん?」
「えー? なに言うてるん?」
「学校のシステムにハッキングしたの。成績のデータがあったわ。学年2位は岸くんで、1位は、わたし」
「おおっ、やるやん」
「岸のパソコンにだって侵入できるから」
「……」
「乙女のために、こいつのこと応援しようと思ってたけど、ダメ。乙女、岸はブラックハッカーよ!」
怒っているシュウちゃんに、あたしは、おろおろしながら言った。
「岸が……ブラックハッカー……? どういうこと?」
「乙女、岸は犯罪者なのよ!」




